第161話 新興宗教立ち上げ?

「はー……。とにかくシュオールから許可はもらってきました。別に神竜になろうが好きにしなさい。文句言ってくるなら私に言ってきなさい。」


 王都に戻ってきたティフォーネは、珍しく疲れたような顔でこめかみをもみほぐしながらエルに対して報告を行う。

 普段から飄々としている彼女がこんなに疲れ果てた顔をしているとは……。よっぽどタフな交渉をしてきたに違いない!さすが師匠!そこに痺れる!憧れるゥ!!とエルはティフォーネを憧れの目で見る。

 そして、それを受けて、えへん、と胸を張る彼女ではあるが、エルがそんな風に感動しているとは思いもよらないのだろう。

 だが結果としてうまく行って尊敬されていればいいのである。


「まあ、とはいえ他の竜や人間たちがどう思うかまでは知りません。自分のことは自分で解決しなさい。他の竜とかは気に入らないから襲い掛かってくることもあるかもしれませんが。」


 まあ、確かにそこまで師匠を頼るのはアレだな。自分の身は自分で守らなければ、とエルはその言葉に頷いた。


「ともあれ、神竜になるからには、ただ信仰心を集めるだけではなく、それを還元して慕う信者に何らかの加護を与えなければなりません。信仰を集めてパワーソースを増し、それを使って奇跡を起こしたり信者が神聖術を使えるようなシステムを作らなければならないのでは?私も神関係のことは良くわかりませんが。」


 えぇ……。めんどい……。と思わずエルはドラゴンの顔を器用にしかめて仏頂面を作り出す。力は欲しいけどめんどくさいのは嫌だ!ノブレスオブリージュなんて俺には関係ない!とでも言いたげではあるが、そもそも竜族はそれが基本的であり、人間なんかと共存しようというエルのほうが異端なのである。


「まあ、まずは教えを作る。それを広めてくれる神官などを作る。あちこちで奇跡を起こして自分の力をアピールする。信者が神聖術を使うためのパワーソースになる、などなどやるべきことは山のようにあるでしょうね。

 しかも、他の宗教もライバルになるのだからあからさまに嫌な顔はするでしょう。大変でしょうが頑張りなさい。」


 そのティフォーネの言葉に、エルは思わず頭を抱えて苦悩の表情になる。確かにそれだけ食い込めば人類社会からの排除は少なくなる。

 だが、他の神殿から睨まれたり、自分の教えやら組織やら作り出さなければならないクソクソ面倒くささは想像するだけでエルを悶絶させた。

 やっぱり世の中いい事ばかりじゃないんだなぁ……と思わずエルはため息と共に悟ったのだった。

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