第159話 ティフォーネたちと神竜。

『と、いうわけでどうしよう師匠……?』


 アヴリルから神竜へのことを聞いたエルは、あちこちをふらふらとしているティフォーネを呼び寄せて話を聞くことにした。

 神の武器を破壊した彼女は、自分の役目は終わったと言わんばかりに気ままに放浪をしていたのだが、エルから鱗を通して呼び出されたら来るぐらいの感性は存在している。

 シュオールの杯から出した麦から、王都の市民たちが作ってくれた大量の料理を用意して、献上することでティフォーネの機嫌を良くする。これが勝利のカギだ!とそんなことを考えているエルの前で、ティフォーネは大量の食事を頬張りながら言葉を放つ。


「もぐもぐ……。別にいいのでは?別に神竜になろうと竜であろう事は変わりないでしょうから。我々も神であれば全て敵、とは考えていないので。

 神々の肉体を焼き払ったのも……まあ言ってしまえば成り行きですし。」


 成り行きで神々を滅ぼしたのか……。(困惑)となるがまあ実際はそんなところだろう。しかしそれは問題ではない。下手をすれば、神に近い存在になればティフォーネたちが襲い掛かってくるのではないか、という最悪の想像をしていたのだが、彼女たち的にはわりとどうでもいいらしい。

 まあ、そうでもなければ、彼女たちは神々や使える人々に対して戦いを仕掛けて全面戦争になっているはずだし、彼女の緩い価値観……他者に対する無関心さにある意味救われたエルは思わずほっとする。


「まあ、これは私の意見で貴方の母親はどういう意見になるかは知りませんが。

 もしかしたら「私の子が神に近い存在になるなんて許さない!根こそぎ破壊してやる!」となるかもしれませんが……まあないでしょうね。」


 そもそも竜は基本的に子育ても放置主義である。「まあ死んでなければいいだろ。あとは好きにしろ。」というのが竜の基本的考えだ。

 他の竜ならば、放置して死んでもまあ仕方ない程度しか考えていない者たちもいる。

 それに比べて、エルの母親であるシュオールはかなり甘い……いや、めちゃくちゃ甘いと言っていいだろう。

 そんな彼女に対して我神竜になる!と言ったらどうなるか正直予想できなくて、エルは思わず頭を抱えた。


「……まあ、そんなに深刻に考えなくてもいいですよ。私からシュオールには言っておきましょう。そもそも彼女は息子に過干渉しすぎ(竜的視点)でしょう。ちょっとは息子離れしろ、と私から言っておきましょうか。」


 し、師匠~!さす師匠!!頼りになる!!我一生ついていく!!とそれに対して喜びの声をエルは上げた。

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