第158話 神竜への神化?

「竜様!見てくれ!!これが俺たちが作り上げた「竜神殿」だ!!俺たちの気持ちだと思ってくれ!!」


 王都に作り上げられた巨大な一軒家のような神殿。これは王都の市民たちがエルのために作り出した家代わりの神殿である。

 だが、流石にエルが普通の大きさに戻っても平然として暮らせるほどの巨大な神殿を作り上げたら他の神殿たちが切れるため、神殿としては家のようなこじんまりとしたものだが、彼としては住居代わりとしてちょうどいいといえるだろう。


(まあ、それに神官もいないのに大きな神殿など作られても困るからな。ここには彫像か何か置いてもらって崇めてもらうか。もっとも、神官など誰もいないへっぽこ信仰だけどな!!)


 まあ、至高神や大地母神などのように大神殿を作って大々的に祭ってほしいわけでもない。(そもそも直接的な加護を与えることは今はできない)

 それに神官の一人もいない神殿などそのうち寂れてなくなってしまう事は目に見えている。そこらのお地蔵様に道端に存在して困った時に祈るぐらいでちょうどいいのだ。強大な力を持った竜が直接人類社会に干渉してもろくでもない事になるのは目に見えている。


(ま、それにどうせ今は感謝しても人間は感謝を忘れるもの。次第に古びて見捨てられるのは仕方ないか。向こうはここにいてほしいとは分かってるけど、ずっと我ここにいるわけにはいかないし。)


「……エル様、ちょっといいかな?」


 そんなこんなを行っている内に、辺境の開拓村ガリアからここまでやってきた彼の味方であり上級の魔術師であるアヴリルが声をかけてくる。

 それに答えるように、小型化しているエルは作られたばかりの竜神殿内部に入っていく。内部の部屋に入ったアヴリルは魔術結界を張ると、エルをあちこちと魔力的な検査を行い、ふむ、と自分の言葉を放つ。


「ふむ、やっぱりか、エル様は配信の人々やこの地の人々の信仰を集めることでさらに上位の『神竜』へと『神化』しかかってるよ。まあ、あれだけ配信で大々的に色々やった上に、この地の人々をあれだけ救って慕われたら当然といえば当然か……。」


 えっ?なにそれ怖い。我知らないんだけど?とエルは思わず茫然とした。確かに神竜へと進化すればさらなる強大な力を得ることができるだろう。

 だがそれは当然人々の信仰心がパワーソースになるので、信仰心を集めるためにあれやこれや駆けずり回り、慕う人々に何らかの加護を与える必要があるということである。さてどうしたものか……そもそもシュオールやティフォーネたちと戦った神の一柱となるなんて、彼女たち許してくれるのか?とエルは思わず頭を抱えた。


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