第157話 至高神の大神殿
「ふざけるな!!あんな怪物どもを我が王都に引き入れるなど!!しかも竜を崇める竜神殿まで作るだと!?本当にふざけるなよ!!」
王都内部でほとんどがエルの事を歓迎ムードの中、それに対して怒り狂っていた人々がいた。それは宗教関係、特に至高神の大神殿である。
実際に神の権威を象徴する神の武器ミストルティンを占拠され、無理矢理動かされた事、そして竜によってその神の武器が破壊された事は、既存秩序の根本である神々の権威を大きく落とす事になってしまった。
特にその煽りを受けたのが、王都の秩序や法による支配を行う至高神の神殿だ。
人類至上派と結びつき、法の支配を行って王都の秩序を保っていた至高神の神官たち。その基盤も権威も木っ端みじんに砕かれて、ぽっと出の竜という名の怪物に大きな顔をされたらそれは当然面白くない。
さらに彼らにとって面白くないのは、エル自身を信仰すること……すなわち『竜信仰』がこの王都で自然発生したことである。
この世界において、竜信仰などリザートマン族などと言った蛮族が中心に行う信仰である。ティフォーネたち自身も人間にはあまり関心がなく、信仰されても「ふーんそれで?」程度で特に加護を与えることも少ない。
だが、エルは実際に自分たちを救ってくれるし、食料も供給してくれる。それを神として崇めるのは不思議ではない。そして、そうなれば信仰心が離れるのはどこか。
それは、当然今まで人類至上派と結びついて秩序を保っていた至高神である。
大地母神の神殿は極めて日常に親しんでいるし、戦神は多少権威は落ちたが、戦神と弓神は異なるので戦いを司る戦神信仰が落ちはしない。
弓神信仰も、どちらかというと獲物を狩る狩人たちに信奉されている。
そうなれば、必然的に人類至上派と組んでまで秩序を保とうとした至高神信仰が衰えてしまうのは当然といえる。
「ええい!面白くない!信仰が衰えたなどと至高神様にどう言い訳すればいいのか!!我々がどんなに苦労して人類至上派に頭を下げて秩序を維持して被害を抑えていたのかどいつもこいつもわかっておらん!!」
そんな怒り狂っている至高神の大神官に対して、恐る恐る他の下級神官が話しかけてくる。その報告を聞いて、大神官はほう、と怒りを収める。
「なるほど………。隣国の貴族たちが我々と話しがあると。それはそれは。あんなケダモノよりも我々に話があるとは流石は見る目がある。そう、我々至高神こそがこの世界の秩序を守る義務がある!それをどいつもこいつも分かっておらんのだ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます