第154話 保守派と中立派と竜
「……。分かった。そちらの言うことを受け入れよう。」
ルーシアは渋い顔をしながらも中立派の大貴族の言葉を受け入れる。
感情としては納得していないが、条件を飲んで頭まで下げられてそれで断るということは、相手の面子を潰すのに等しい。そうなれば、彼らは死ぬまで戦い続けて泥沼の内戦状態になるだろう。
貴族にとって面子とはそれほど重いものなのだ。向こうの大貴族も心の中では色々思っているだろうが、頭を下げてまで交渉決裂したら、完全に向こうの面子を潰してしまうことになる。
ここがお互いの落とし所か……とルーシアも納得する。いわゆる一種のプロレスと言ってもいい。ともあれ、これで中立派との事実上の和解は完了した。
(うーん、やっぱり貴族社会って怖いなぁ。できれば誰かに任せたいなぁ。)
そんな風にエルは思っていると、その大貴族はこちらの方へと近づいてくる。
何だ何だ?何かこっちにやってくるのか?と警戒しているエルに対して、大貴族はエルに膝をついて敬意を捧げながら言葉を続ける。
「初めまして。竜様。私は元中立派のレメディオスという者です。今まで我々の代わりにこの国のために戦っていただいてありがとうございます。何の縁もゆかりもないのにこの国のために戦っていただくとは……。我々のふがいなさをお許しください。」
その大貴族の言葉に、エルは思わず、お、おう、という感じになってしまうが、ルーシアは思わずジト目で見てしまう。
傍から見たら、綺麗事でごまかすだけの言葉だとは思うが、それも形骸的なもの、政治的なアピールかもしれないが、何を白々しく言ってるんだ、と血を流して戦ってきた保守派からしたら言いたいがそれをぐっとこらえる。
「ともあれ……これで事実上の同盟は行なわれた、という事か。よし、これから共和国成立のために話し合おう。それと、言っておくが一番血を流したのはそこの竜様だぞ?我々も敬意を払うが、お前たち血を流していないコウモリどもは彼に対して舐めた真似をしたらこの私の名に賭けて許さんぞ。例え血みどろの内戦になっても、私は『やる』。それをお仲間に伝えておけ。」
殺意すら叩きつけながら、ルーシアは大貴族に対してそう言い放つ。それを軽く大貴族は受け流すが、その中でエルは一つの考えに囚われていた。
(……あれ?これってもしかして我重要人物扱いされてね?これから厄介事舞い込んできそうなフラグじゃね?)
そんな風に思っている彼をよそに、さらに会話は進んでいった。
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