第153話 元保守派と元中立派の和解。
とりあえずそんな風に双子たちとの話はついたエルとルーシアだったが、二人ともやるべきことは山のようにあった。
その中でも最も重要な事は、元中立派たちとの面会である。この国を運営していくためには、元中立派の者たちもこちらに取り込んでおかなければならない。
だが、保守派の人間からすれば、中立派の人間など肝心な時にこちらに力を貸さなかったくせに、流れが優位に立ってからこちらにすり寄ってきたコウモリ野郎でしかない。復興真っ最中の王都の会議室で、ルーシアは元中立派と面会を行うことになった。
会議室に入ってきた元中立派の大貴族に対して、さっそくルーシアとその貴族との皮肉の応酬が始まる。
「これはこれは、辺境の田舎者ではありませんか。田舎者がわざわざこんなところに来ているとは……。」
「誰も好きで来ている訳ではないんだが?お前たちコウモリどものせいで、ここまで来るしかなかったんだが、そこのところ分かっているのか?お前たちがもっとしっかりしていればこんなことにはならなかったんだぞ?」
バチバチと出合い頭にやりあうルーシアと中立派の大貴族。俺、もう大迷宮に帰っていいかな?とエルは心の中で呟くが、しばらくして、ふう、と中立派の大貴族もため息をついて肩を落とす。
「とはいえ……。このたびは全面的にそちらが正しい。そちらが踏ん張ってくれなかったら、この国の国体すら維持できなかった可能性が高い。王都奪還まで行うとは正直思っていなかったからな……。王都復興や共和国建国の負担はそちらの要求通り支払う。これでこの度は手打ちにしてもらいたい。」
そういいながら、大貴族はルーシアに対して頭を下げる。いわゆる全面降伏の形である。貴族は面子が最も大事だが、頭を下げる時に下げなければ殲滅されるだけである。さらに、中立派は実際は戦力を損耗してはいないし、金も多量に所有している。
ここで保守派と戦うとなれば、それこそ内戦が再び起こって国が真っ二つになるのは間違いない。中立派もそれを計算に入れているのだろう。
(頭は優位に立った時こそ下げる物!ここで断れば泥沼の内戦そのものだ。それは向こうも望んでいないだろう)
とこういう中立派の心の声が聞こえてきそうである。保守派としてもここまで受け入れるのなら仕方ないな……となるし、中立派も今までコウモリとして振舞ってきた負い目がある。それを金と頭を下げるので解決できるのなら安いものだ、という考えが大半を占めている。
その考えもあって、ルーシアは渋々ながらも、大貴族のその言葉を受け入れることになった。
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