第152話 双子の説得。
「嫌です。私たちは竜様から離れません。」
エルとルーシアは、ユリアたちに自分たちの考えをきちんと伝えたのだが、その彼らの意見はじつにあっさりと断られた。
その頑なな意見に、思わずえぇ………。という顔になってしまうエルに対して、ユリアたちはさらに言葉を放つ。
「私たちは冒険者をやめませんし、竜様からも離れません。ずっと一緒についていきます。この決意は変わりません。」
そんな決意を込められた言葉を言われても正直困る。エルは思わず頭を抱えた。彼女たちには幸せになってほしいし、こんな冒険者なんてヤクザ稼業からさっさと引退してほしい。だが、彼女たちはそれを拒否してずっとエルの傍にいたいというのだ。
ええい、親の心子知らずとはこの事か、とエルは説得にかかるが、それでも彼女たちの決意は変わらないらしい。
思わず苛立ちそうになるエルに対して、ルーシアはエルを諫めに入る。
「まあまあ、竜様。考えてもみたまえ。この子はずっと君から離されて敵である人類至上派のど真ん中で孤立していたんだ。竜様から離れたくないという気持ちも理解できるだろう?」
『それはそうかもしれないが………。』
「共和国を作るためには時間がかかる。個人的には冒険者は辞めてほしいが………。まあ仕方あるまい。だが、共和国制が始まったら、どちらかは必ず引退してほしい。それが条件だ。それを守れるのならしばらく続けてもいいだろう。」
ルーシア的にも続けさせたくはない。本来ならばしっかり自分の手元でガードして共和国制に組み込みたい人材なのではある。だが、彼女たちへの妥協案としてこの提案を考え付いたのだろう。
こんな状況ならエルが必死になって双子を必死になって守るだろうし、どちらかが冒険者をやめてくれれば最悪元王家の血だけは確保できる。
元王家の血というのはそれだけ保守派には大きいのだ。(本来はこの地点でどちらかが冒険者を引退させたかったのだが、流石にそれは酷だと考えたのだ)
そのルーシアの言葉に、エルは渋柿を食べたような渋い表情になるが、反対に双子は思わず顔を輝かせる。
まぁ………。双子のリハビリ期間と考えれば仕方ないか………。あとは自分が死に物狂いで彼女たちを守るしかないかぁ………。と考えて、エルは思わず深いため息をついた。
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