第150話 竜と共和国制
別の部屋に入ったルーシアと小型化しているエルは、対面しながらさらにお互いに言葉を続ける。
「それより、竜様は彼女たちをどうする気なんだ?王家は無くすとはいえ、やはり貴重な王家の血だ。一応名目だけ君主として残し、実質は我々中立派や保守派の貴族たちや商人たちの代表者だけで実務を行う。一応市民の代表者もいれるつもりではあるが。」
共和制とは、主権が君主以外にある政体である。実際の主権は貴族たちや様々の代表者たちで行い、君主はお飾りとして存在することもある。
つまり、立憲君主制の前身とでもいえる形だ。
ルーシアはユリアたちをお飾りの君主として担ぎ上げる気なのだ。
共和国制には、軍部か文民がどちらかが独裁を行う共和制独裁政治、それとは逆に民主主義とかなり近い体制である民主共和制国家がある。ルーシアが行いたいのは民主共和国であろう。ルーシアがその気になれば軍部が独裁政治を行う共和独裁政治を行えるのに、である。
『しかし………。お前たちはそれでいいのか?絶対に「自分たちがこの国を手に入れるためにお飾りの王家を掲げて、実権を奪い取ったんだ」と言われそうだが。』
「それを言わせないための共和国制だ。色々な勢力を引き込んでお互いの牽制や交渉で国をやりくりしていく。何せこの国には官僚が圧倒的に足りない。使える物は全て使って運営していく。それがそれが私の目的だ。」
「そして、それは貴方も同じだ。私は貴方を共和国の一員として歓迎したい。どうだ?乗る気はないか?」
それを聞いて、小型化しているエルは思わず仰天した。まさか怪物、化物である自分を共和国の一員として招き入れるとか思い切りが良すぎるというものだ。
のけぞりながら驚きを表現してエルはルーシアに言葉を返す。
『正気か!?怪物である俺を共和国に招き入れるだと!?絶対にほかの奴らが納得しないぞ!?』
「いいや、納得するし納得させるさ。この戦いで最も活躍して戦果を上げたのは外ならぬ竜様だ。その活躍を間近で見ていた我々も賛成するし、王都復興に食料やら何やら手伝ってくれた市民たちも両手を上げて賛成するだろう。信賞必罰が統治の基本だ。ここまで活躍してくれた竜様にはそれなりの恩恵があってしかるべきだろう。」
なるほど。確かに落ち着いて考えてみれば、彼女の言うことも納得できる。今のエルは単独で保守派と戦えるほどの強大な戦力である使役竜を確保している。
さらに、エルを味方を引き入れれば、実質世界最強であるティフォーネやシュオールとの交渉のコネも手に入る。しかもエル自身も強力であり極めて親人類派である。
そう考えるとルーシアがエルをこちらに引き入れたい、というのも分かる。そして、それはエルの生き延びたいという意思と一致する事になる。悪くはない、いや、むしろいい話だ。ここは引き受けるべきか………。とエルは考え込んだ。
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