第149話 二人の再開と共和国制
そして、その一方で人類至上派によってミストルティンの頭脳として扱われていたユリアだったが、医者や魔術師であるアヴリルによって身体のチェックを受けて、ベッドに寝かされていた。
飛行巨大要塞とも呼べるミストルティンの中枢部になるという事は、膨大な情報量が脳内に流れ込んでくるということである。並みの人間………いや、優れた魔術師でも情報量が処理できずに廃人状態になってもおかしくはない。
だが、そこはもうすでに死亡した教授が、彼女を廃人にさせないために色々手を尽くしていたらしい事は確認できている。
と、心身ともにチェックを受けて、回復魔術などで回復したユリアは、ゆっくりと目を覚まして周囲を見回す。
「う………。ここは………。」
「ユリア姉さん!無事でよかった………!!」
目を覚ましたユリアに対して、涙を流しながらレイアは抱き着く。散々な戦いで大きな犠牲も出たが、この二人が無事に再開できただけでもエルにとっては満足できることだった。
小型化しているエルはうんうん、と頷きながらしばらく二人きりにしたほうがいいだろう、とアヴリルやルーシアたちと共にその部屋から離れる。
これでユリアを助け出すという目的は達成したエルだったが、また次の目的がやってきた。それは、ユリアたちをどうするか、という問題である。
『ちょうどいいから聞いておこう。辺境伯としてはユリアたちを国王にした王政にしたほうがいいと思うのだが、なぜ共和国制にしようと思ったんだ?』
そう、辺境伯としては、王家の血を引くユリアたちがいるのだから彼女たちを女王にして新たな王政を立てるのが一番なはずである。
共和国制はいざという危急の時に迅速な決定ができないという欠点がある。
「………簡単にいうと、もう王家自体がボロボロなせいだ。人類至上派のせいで王家回りの優秀な人間は根こそぎ処分されている。残っていたのはコウモリ野郎の元中立派だが、いかに優秀でも奴らは信用できない。
元保守派の人材も今いる場所を離れて王都に住んで王家のために尽くそうという人材もいるが、やはり数は少なすぎる。」
彼女は言わなかったが、いかに保守派といえど、自分の領地から離れて遠い王都で国王のために忠誠を尽くすなどといったガンキマリの人間は、いかに保守派でもごくごく少数である。保守派は今までの自分の生活や自分の大事なものを守るために戦っただけなのである。(それはコウモリと揶揄される中立派も同じではあるが)
ともあれ、その弱点をカバーできず、無理に王政にすれば下手をすればユリアたちが元中立派の操り人形になる可能性もある。それを防ぐために、ルーシアは共和国制にする、と宣言したのである。
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