第135話 生体兵器レギオン
『うぉおおお!!くたばれオラァ!!』
エルはそう叫びながら、城壁歩廊に設置されていた結界発生器を自らの爪で破壊する。そして、それと同時に結界を展開している四方向の一部が欠けた事により、王都を天蓋のように守っていた防護結界の半分が消え去る。
それを同時に、エルの開けた穴から入ってくるしかなかったワイバーンたちが一斉に内部へと入り込んでくる。
竜騎士に一時的に指揮系統を預けられたワイバーンたちは、竜騎士たちの命に市民たちでなく兵士たちに対して攻撃を仕掛けていく。
雷撃によって次々と焼かれている兵士たちを見ながら、市民やレジスタンスたちは歓声を上げた。結界も破られ、大量のワイバーンたちが襲い掛かってきて、さらにはドラゴンすら存在する上にこちらは劣勢。
そんな状態で士気を高められるほど兵士たちの練度は高くない。兵士たちが次々と逃げたり武器を捨てているのも見受けられる。
そんな光景を見ながら、あとはこのまま押していって兵士たちを降伏させていけば……と思った瞬間、ゴゴゴ、とどこからか地鳴りが響き渡った。
「な、何だこれ!?」
その地鳴りと同時に、正気を失った人間の融合体である肉達磨たち……否、力を暴走させられた元人間たちが次々と現れてきた。
それは人間牧場で捉えられていた元貴族のわずかながらに神の血を引く人間たちだ。
もはや用済みとなった彼らは、その体内に眠る力を暴走させられ、生体兵器としての使用をされているのである。
「ファハハハ!!食え!何もかも貪り食らってしまえ!!」
この複数の人間が融合した肉達磨……レギオンは、人間牧場の証拠隠滅兼、生体兵器として暴れまわって注意を引くための存在である。
肉達磨の表面から無数の手足と顔が生えたレギオンは、逃げ惑う市民たちを踏みつぶし、無差別に手に取り貪り食うだけの存在でしかない。
その表面の顔は皆、明らかに正気を失っており、めそめそと泣いたりけたけたと笑うだけである。その無数の腕で捉えた市民を自らの肉に取り込み、さらに膨張していく。これこそが人類至上派が(短時間で無理矢理)開発した生体兵器である。
そのおぞましさに、歓声を上げていた市民たちの声は、瞬時に恐怖へと切り替わる。
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