第124話 ミストルティン、消滅2

 いかに速度が速くても、流石に爆発の衝撃波などまで逃げられない。だが、それは通常の手段では、である。爆発と衝撃波は彼らを殲滅せんと襲い掛かる。

 ティフォーネの結界ならばこれも防御できるだろうが、か弱い人間を抱えたまま防御や超音速で飛行した場合の影響が読めない。

 ならば、とティフォーネはエルたちごと自分自身を瞬間転移させて、爆発と衝撃波の届かない遥か遠くへと転移する。

 そして、ミストルティンの爆発によって生じたキノコ雲を空中に浮かび、エルを片手で持ちながら能天気に言葉を放つ。


「おー、見事に爆発してますねぇ。まあ、あの辺一体何もかも吹き飛ばされましたが元が森だからいいとしましょう。私が戦ってこの程度で済んだなんて、自分自身の鋼の自制心に胸を張っていいレベルですね。ぶい。」


 そう言いながら、ティフォーネは無表情でブイサインを行う。……やっぱりこの女はやべー女性なんだなぁ、とつくづく思い知る。

 まあ、結局暴走もせずこちらに力を貸してくれたのでヨシ!とエルは判断する。


『と、とりあえずありがとう師匠。マジで助かった。師匠がいなかったらこっちも大ダメージを受けている可能性もあったし……。』


 そのエルの言葉を聞きながら、ティフォーネはふふん、とその薄い胸を反らしてドヤ顔をしながらエルを見下ろす。


「ふふん、もっと崇め奉りなさい。自分でも忘れがちですが、私は凄い存在なのです。えへん。……まあ、それはともかく、貴方に何かあったらシュオールがマジ切れしてこちらに襲い掛かってくるかもしれませんしね……。」


 確かに、ミストルティンの爆発によって、元森部分は無数の木々が薙ぎ払われ、衝撃波によって丸裸になった木々は燃えて消滅し、爆発による大地に大きなクーデターが存在するその場所は、まさに地獄と言わんばかりだった。まさに核爆発と言わんばかりのその惨状を見れば、エルの力では無傷とはいられないのはよくわかる。

 何かミストルティンの残骸が回収できるのかもしれないが、今の状況で近づくなど無理もいいところである。


「ともあれ、貴方の手に余る状況だったので、私が手を貸しましたが、これから人の世に関することは貴方が何とかしなさい。私は人間の世界なんてどうなろうが関係ありませんし、知ったことでもありませんからね。」


 ティフォーネにとって人間の世界などどうでもいい。纏めてかかってきても殲滅できる自信がある。彼女はふわふわと空を浮かびながら、うーんと能天気に背伸びをする。


「いやぁ数百年ぶりにいい運動になりました。やっぱり体を動かさないとダメですねぇ。さて、それじゃ帰りましょうか。……え?帰るよりも早く王都に侵攻しないとダメ?全く面倒くさいですねぇ。やっぱり人間の世界なんて関わるべきじゃないですね。」


 ティフォーネはそう言いながら、軽く肩を竦めた。

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