第125話 その時の人類至上派

 ミストルティン消滅!その絶望的な情景を見て、もっとも混乱に陥ったのは、王都に巣食う人類至上派だった。

 これさえあれば我々は勝てる!この国を支配し他の国の侵略すらできる!と思い込んでいた彼らの考えと伸びた鼻は見事にへし折られた形になる。

 本来なら、これが失敗しても二の策、三の策を取っているのが普通であり常識的な考えだ。だが、奢った彼らにはそんな作戦を考えている知性などありはしなかった。

 いや、正確に言えば下部にはなかったが、上層部には存在していた。


「……むう、まさかミストルティンが破壊させられるとは………。それでは、逃げる準備は整っているかね?」


「はい、上層部の大部分はすでに隣国へと避難させました。この国での実験は失敗でしたが、この成果を元に他国の人類至上派に供与すれば受け入れてくれると思われます。」


「うむ、やむを得ないが仕方ないな。この国での実験は失敗だったとさっさと捨てようか。こんなろくでもない国を捨てたところで我々には問題はない。」


 真っ先に行ったことは、重要な魔術兵器である「エキドナ」を本人の転移魔術によって移動させたことである。

 さらに、大量の資料などもどんどん魔術通信を通して隣国へと流している。

 そして、次に行うべきことは上層部である自分自身が安全に避難することである。

 自分たち上層部が安全さえ確保されていればあとは問題ない。下の奴らを捨て駒にして足止めを行い、後は悠々と逃げ去ればいいのだ。

 そして、逃げ去るとするのならこの王都などどうなろうが彼らの知ったことではない。

 徹底的に破壊し、打ちこわし、国民を殲滅すれば、敵軍である辺境伯に多大なダメージを負わせるだろう。やらない理由がない。


「ああ、できれば女も大量にさらいますか。徹底的に破壊して女どもは洗脳しましょう。金銀財宝も全て奪い取りますか。」


「ははは、それはいいですな。ミストルティンの爆発によって、まだまだ辺境伯軍がここまで来るのに時間がかかる。王都に来て瓦礫の残骸しか残っていない奴らの顔を見て、少しは溜飲を下げますか。」


そんな風に笑っていた彼らは、隣国へと逃げ出すための準備を行っていた。

下部の部下などどうなってもいい。自分たちだけ生き残ればいいというエゴが膨れ上がったのが人類至上派の上層部の正体である。(少なくともこの国は)

だが、彼らの笑いは、隣国からの返信に対して凍り付いた。


「……何!?我々を受け入れないだと!?どういうことだ!!」




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