第123話 ミストルティン、消滅。

 ミストルティンが暴発した神力の光は、狙いを定められることもなく、無差別に周囲に広がっていく。

 そしてそれはミストルティンも自身も包み込み、さらには外へと逃げ出したエルとユリアもまるで追いかけてくるように迫ってくる。

 拡散されているとはいえ、ティフォーネすらも傷つけた神力の光をまともに食らえば、いかにエルと言えどもどうなるかは不明だ。正直、到底耐えきれるとは思えない。必死にミストルティンから脱出して空を飛んで逃げているエルだが、気絶しているユリアを抱えていては速度も落ちるのは当然だ。


『うわーっ!!死ぬーっ!!助けてマミィー!!助けてー!!』


 神力に巻き込まれてもうだめだ!と彼が目を瞑ったが、全く衝撃やダメージなどはこちらへとやってこない。

 あれ?おかしいな?と彼は恐る恐る目を開ける。

 そして、その目に映ったのは、結界を張って彼らをガードしている純白ので銀髪のロングヘアーの竜人の女性……つまり、ティフォーネの背中だった。彼女はフフン、とこちらを振り返りながら言葉を放つ。


「全く中々戻ってこないからどうしようかと思いましたよ。さすがに中にいるのに叩き潰すにはいきませんからね。……まあ、目標を見つけて無事帰還したのなら、師匠としてはこれぐらいやるのは筋でしょう。貴方の母親も怖いですし。」


 膨大な神力の奔流を軽々と弾き返すティフォーネの姿を見て、流石師匠だ!!一生師匠についていかせてください!!さす師匠!!とエルは心の中で叫んだ。


「よし、そうと決まればこんな所にいつまでもいる必要はありませんね。さっさと逃げますよ。ちょっと飛ばしますからね。」


 神力を弾き返しながら、ティフォーネはエルの手を掴むと、そのまま凄まじい速度でその場を離脱していく。その速度に、エルの腕がミシミシと悲鳴を上げて彼はたまらず叫ぶ。


『うわーっ!!師匠!!少しは手加減してぇえええ!!マジで痛いんだけど!!というかあんまり速度を出しすぎるとユリアに影響が及びかねないから手加減して!!』


「うるさいですね。この危機を救ってあげてるんですから、泣いて土下座して感謝するのが礼儀でしょう?それに神の武器が爆発したら流石にどうなるか私でもわかりませんからね。念のためという奴です。」


 神力を無差別に放出したミストルティンだが、ついに機体構造自体が耐え切れなくなったところに無理矢理神力を放出したのが祟ったのか、あちらこちらで小規模な爆発が起こり始め、それは次々と連鎖していく。

 そして、それはついに限界に達し、ミストルティンは大爆発を起こし、周囲の全てを薙ぎ払いながら巨大なキノコ雲を作り上げていた。

 こうして、ミストルティンは人類守護という目的を行えないまま、その役目を終えたのである。

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