第114話 ミストルティン侵入作戦2

『おらっ!さっさと中枢部……いや指令室を教えろ!!』


 エルは気絶した魔術師を叩き起こして指令室を聞き出そうとする。

 恐らくそこにユリアが存在するはずである。これだけの暴走をユリアが行っているとは思えない。多分これを操縦している存在は別にいるはずである。

 エルのやるべきことはユリアを救出してさっさと避難することだけだ。

 ミストルティンはティフォーネに任せれば自動的に叩き潰してくれるだろう。

 だが、そんな風に魔術師を問い詰めようとするエルに対して、他の駆けつけてきた魔術師たちが魔術を連射してくるので、エルは、とりあえず石壁作成で魔術師たちのそれをやり過ごす。

 非実体の魔術を弾き返せる空間歪曲は極めて強力ではあるが、魔力消費が激しいのも事実。ここまで突撃するまででも空間歪曲を使ってティフォーネたちの余波を防ぎながら突撃してきたエルは、空間歪曲を使いまくった事によって魔力もかなり消費されている。何らかの手段で回復させなくてはならない。

 そこで、エルは目の前の断線したケーブルがバチバチと火花を上げているのを発見した。そこから漏れ出ているのは間違いなく魔力に違いない。

 恐らく、大気中の魔力や、浮遊している真下の地脈から無理矢理魔力を吸い上げて、それを神力へと変化しているのだろう。


『おい!このケーブルって魔力が流れているのか!?』


「あ、ああ!それは魔力を吸い上げて神力変換機に伝えるためのケーブルだ!

 地脈や大気から吸い上げた魔力が走っている!!」


 強力な魔力が走っているのなら、そこから失った魔力を補充できるはずである。

 だが、それは高圧電線に手を突っ込むようなものだ。危険極まりないが、それでもここで嬲り殺しにされるよりはマシである。

 エルはそのケーブルに手を突っ込み、猛烈な魔力が彼の体の中へと凄まじい勢いで流れ込んでくる。


『ぐああああああ!!』


 流れ込んでくる猛烈な魔力をエルは自分の体の中へと吸収していく。高圧電流にも似た凄まじい勢いで流れ込んでくる魔力は、人間では容易く肉体がはじけ飛んでしまうだろう。だが、竜としてのポテンシャルは、見事にその膨大な魔力を吸収してしまった。……肉体のあちこちから煙がしゅうしゅうと出ているのはご愛敬だが。


『ふう、な、何とかなったか……。よし、ダメージは負ったが魔力回復したからヨシ!!さあ、さっさと指令室を教えろ!!でないとどうなるか………分かるか?』


 そう言いながら、エルは自らの爪を魔術師へと見せつけた。初めて目にする怪物に対して、心の折れた魔術師は自らの知っていることをベラベラと話し始めた。



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