第111話 エル、突撃する。
『ぐぁあああああ――ッ!!空間歪曲展開ッ!!』
一方のエルはひたすら森の中を走り回っていた。作戦ではティフォーネが正面に立って適当にミストルティンを痛めつけ、その隙にミストルティン内部へと入り込む、という作戦である。
だが、作戦としてはシンプルではあるが、実際やるとすればそれには大きな問題が立ち塞がる。
それは、周辺に荒れ狂う猛烈な雷撃やプラズマ、魔術砲撃などが無差別に四方に飛び散る地獄に飛び込むという事を意味している。
ティフォーネは一見冷静ではあるが、その本質は荒れ狂う暴風神そのものである。
戦いになれば、作戦も忘れ冷静さを失い、何もかも根こそぎ吹き飛ばす猛烈な台風と化す可能性も十分ある。
そのため、小型化した彼は森の中に完全に姿を隠して飛行するのではなく、わざとティフォーネから見えるようにしながら森の中を飛行しているのだ。
そのお陰で冷静さを取り戻したティフォーネだったが、それでもその下はまさしく地獄と言っていい。
ミストルティンの余波、そしてそれに加えてティフォーネのブレスとミストルティンの主砲が相殺され、対消滅した余波。
できるかぎり威力を合わせたとはいえ、それでも完璧に威力を消し去るほどではない。余波のプラズマや神力の光が虚空だけでなく、地上の森にも無差別に降りかかり、樹木を消滅させ、大地を吹き飛ばし、炎上させていく。
そのプラズマと神力の雨の中を、小型化したエルは必死になってえっちらおっちらと飛行しているのだ。
無論、こんな地獄の中でただ突撃するだけでは焼かれるだけである。
そのため、エルは重力の魔術の応用、時空間を歪める空間歪曲によって自分の周囲の時空間を歪め、それらを弾き返しながらひたすら前進しているのである。
『うおおおお!!竜は度胸!!めっちゃこえええええ!!』
そう叫びながら必死に重力反発推進で飛行している彼の耳に、ティフォーネの叫びが聞こえてくる。
ティフォーネは今度は竜骨杖を天空に掲げながら魔力を解き放ちながら朗々と声を響かせる。
「聞け!驕れる人類どもよ!!我こそこの世界の誕生より存在し、神々の肉体を滅ぼし、自然界の調和を保つエンシェントドラゴンロードの一柱、空帝ティフォーネなり!!神々の神器さえ手に入れれば他種族を支配できるというその驕り、我が空帝の名において鉄槌を下す!!」
「我が空帝の名において!落ちよ神鳴り!!」
その彼女の叫びと共に、天空を埋め尽くす雷の海が瞬時に構築され、その雷の海は波のように天空から大地へと流れ落ちてミストルティンへと直撃していく。
そして、その雷撃の雨の中、何とか防御しているエルは(師匠勘弁してぇえええ!!)と心の中で叫んでいた。
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ティフォーネ「私の弟子ならこれぐらい耐えられるでしょう。ガンバです。(雷撃を叩き込みながら)」
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