第68話 グラビティブレス
「おっと、いけないいけない。すぐ暴走しそうになるのは私の悪い癖ですね。まあ、私も暴風神としての荒ぶる属性がありますし……。」
そのティフォーネの冷静さを取り戻した呟きにより、暴風は瞬時に止むが上空を覆い尽くす雷の海ともいえる状況は、流石の彼女でも少しエネルギー的にもったいないと思ったらしい。
「うーん、ここまで発生させたエネルギーをただ消し去るのはあまりにもったいないですね……。そうだ。」
宙に浮かんだままのティフォーネは、ちらりと大地にいるエルの方に視線を向ける。
えっ?師匠何でこっち見てるの?何かしそうで怖いんだけど?
そんなエルの疑問に答えるように、ティフォーネはエルに対して、にこりと笑いかける。
「大丈夫ですよ~。ちょっとピリッとするかもですが、まあ死なないでしょう多分。
親友の息子ならこの程度では死なないと私は信じています。」
ちょっと待て!!さっきと言ってる事全然違うじゃん!!いくら何でもフリーダムすぎやろ!!と突っ込みを入れたくなったが、彼女がそんなことで止まるはずもない。
ふわり、とエルの体から魔力的に融合したはずのティフォーネの鱗が頭上に浮かび上がり、そこに対して空一面の雷撃が一斉に襲いかかる。
『ぎゃわー!?』
鼓膜を破らんばかりの凄まじい轟音と共に襲いかかる雷撃。
猛烈な雷撃の嵐は次々のエルの頭上のティフォーネの鱗へと吸い込まれていく。
この雷撃の嵐を食らえばいくらエルと言っても一溜りもあるまい。
だが、この雷撃はエルの肉体に襲いかかるのではなく、猛烈なエネルギー流は全て頭上のティフォーネの鱗へと流れこんでいるのだ。
そしてその雷撃はティフォーネの鱗によって魔力へと変換され、エルの全身に猛烈な魔力を与えていた。
つまり、鱗を変換器にして雷をエルの魔力へと変換させたのである。
『ち、力が漲る!!めっちゃ漲ってくる!!』
それはそうだろう。あれだけの雷撃を魔力へと変換したのだ。それくらいになってくれないと困る、とティフォーネは心の中で呟く。
『これならば、ブレスも連続で放てる!!うおおお!食らえ!!我のブレスを!!』
エルはその漲る魔力を自らの喉に集中させ、喉から漆黒の光としか表現できない猛烈な重力波を収束させていく。
その影響で、周囲一面が重力異常を引き起こし、小石や折れた木々が宙に浮かんではまた落ちたり、あらぬ方向に吹き飛んでいくという異常な機動を見せる。
これは彼の発生させた強力な重力波が周囲一面の重力自体に影響を与えているのだ。
『ガァアアアア!!』
当然、それに腐敗竜もただ待っているだけではない。重力波のチャージ中でも腐敗竜はエルに対して襲いかかろうとする。
だが、その溢れる重力波により、彼の周囲には重力による結界が展開されている。
落とされた両腕は、小型の腐敗竜になってエルの背後から襲いかかろうとするが、重力場によってたちまち二体の小型腐敗竜は押し潰されている。
本体の腐敗竜ですら、荒れ狂う重力異常と重力場によって身動き取れないのだ。
《ようし!いっけぇえええ!!》
《やっちまえ!!腐敗竜なんてぶっ飛ばせ!!》
エルの口内に、魔力によって作られた重力波が収束され、漆黒の重力塊が作り出される。
あらゆる物を粉砕するその強力極まりない重力波は直線上に射出され、あらゆる物体を重力のスパゲッティ効果で原子レベルに引きちぎる。
『食らえ!これが我のブレス、グラビティブレスだ!!』
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