第10話 開拓村の農業改善(なお一部失敗)
開拓村に、地脈による結界やバロメッツの苗木を渡したエル。開拓村にとってはそれだけでもう神扱いそのものである。
だが、それだけではなく、怪物などに襲われてこの村が壊滅しては困るエルは、さらなる恩恵を村へともたらそうと考えていた。
『あとはそうだな……。結界があるとはいえ、念のために防壁も作っておくとするか。村の発展に邪魔なら破壊してくれても構わんが。』
そういうと、エルは地霊系魔術で土を操り、村の周囲の地面をボコボコと盛り上がらせて高めの土の壁を作る。その後で村人に銘じて出口と入口だけ確保させておき、《土を石へ》の呪文で、その土壁を瞬時に石へと変化させ、村を取り囲む石壁を作り上げる。
村を取り囲む防御用の石壁がいきなり出来て、村人たちから一斉に歓声があがる。
これほど頑丈な防御壁ならば、怪物たちが来てもそうそう突破できはしまい。
《おおおお!これは凄い!!》
《こんなことをあっさりとできるとは……流石竜っすね。》
『あとはそうだな……。地脈の力が強くなるから作物は育ちやすくなるとはいえ、肥料とかも必要だろうから、これも渡しておこう。』
そういうと、エルは転送魔術で自分の拠点である第一階層からとあるものを大量にこちらに転移する。
それは、大量の羊の骨の山。エルが食べた羊肉の残骸であり、処分に困って大量にため込んでいたものである。
これを焼いて細かく砕けば、安価でタンパク質やリン酸が豊富に含まれる肥料の出来上がりである。
一応それはこの開拓村でも知られていたが、これほど大量の骨の山であればより有効に扱えるというものだ。
『うむ、それと土の活力をより強める農法を教えておこう。これを知っていれば土の活力が防げて作物の育ちもよくなるはずだ。』
それは、コムギ→カブ→オオムギ→クローバーの四圃輪栽式農法、いわゆるノーフォーク農法である。これにより、小麦を植えた後のカブや大麦を植えた後のクローバーなどを家畜に与えてより効率よく家畜も育てられるし、土地の力も回復してより小麦や大麦の育ちもよくなるはずである。
適当に「これが土の活力を良くする方法である。地脈を操れる我がいうのだ。間違いはない」とでも適当にいっておけば村人たちも納得するだろう。
地脈の活性化、ノーフォーク農法、骨粉肥料。これだけやれば農作物の育ちはよくなるはずだ。というかそうであってもらわないとこちらが困る。
成果が出るのはしばらく後になるだろうが、それで成果が出れば「さすが竜様!」と崇められてこちらもやりやすくなるだろう。
むふーっと自慢げにエルは鼻息をついている中、村長はエルに対して話しかけてくる。
「すみません……。それもう行われているんですよね……。効果が確認されて配信で爆発的に情報が広まって、今はどこでも行われている技術になっています。」
がーん!!とエルは思わず衝撃を受けて真っ白になる。
そう、通常のファンタジー世界と違う点、それは「配信技術があるという事」だ。
つまり情報の伝達速度が異常なほど早いという事である。この世界では効果があるとされた技術などが早まるのが配信を通してまさに爆発的速度で広まっていく。
そんな中で農民たちが、他の裕福な地主などから配信で有効とされた技術を学び、それを取り入れるのは道理が通っている。(ましてや特別な技術がなければなおのこと)
逆に言えば、教会などが行っていた禁書指定などはほとんど無意味になるということだ。禁じられた技術、危険な技術なども配信によって爆発的に広まってしまう可能性がある。
ともあれ、真っ白になったエルに対して、視聴者からの一斉の揶揄の声が襲い掛かっていた。
《超ドヤ顔からの急転直下wwwねえどんな気持ちwwwどんな気持ちwww》
《これは文字通り草生えますわwwww》
《草に草を生やすな。》
《いやでもこれは仕方ないよ。そこまで知らなかったんだから。それはそれとしてドヤ顔からの真っ白はどうかとww》
その言葉を見て、小型化したエルは、ぷるぷる震えながら、思わずごろんとへそ天しながら拗ねたように手足をジタバタさせる。
『うぁああああん!!畜生!!帰る!!我お家帰るぅううう!!』
《畜生はお前や。》
《超絶辛辣すぎて草。》
《もう少し手加減してさしあげろw》
《すまん。言い過ぎたな謝る。>畜生 その代わりきちんとユリアちゃんたちを守ってな!!》
どいつもこいつも好き勝手言いやがって~!お排泄物ですわ!!とエルは心の中で叫んだ。(この後、視聴者に対してもエルに対してもユリアが滅茶苦茶フォローした)
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お読みいただきありがとうございます。
面白いと感じていただけたら、☆☆☆やフォローをいただけると嬉しいです。
モチペにも繋がりますので、できましたらよろしくお願いいたします。
畜生をファンタジー世界を置き換えるとまた面倒なことになるので、この世界のそれっぽい言葉に翻訳したとお考え下さい。
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