第8話 エネルギー補充と開拓村の保護
『ふう、お疲れ様~。とりあえずゴブリンの出口は塞いだけど、まだまだどこからか入ってきて湧いてくるだろうなぁ……。まあ、今回はこれでいいか……。』
かぎ爪などをゴブリンの体液で汚したまま、エルはユリアたちの元へと帰ってくる。小型化した後で、水筒の水で洗い流してもらいながら、エルはエネルギー不足でぐったりした状態になってしまう。
ゴブリンたちを噛み砕くというのは、生理的嫌悪感もあるが、効率よく退治できるのなら仕方ない。だが、そこで彼は猛烈な疲労感と空腹感に襲われた。
通常状態から小型になるのは問題ないが、小型化から通常状態に戻るのは、小さな肉体に対応できるだけのエネルギーしか存在していない、エネルギーの少ない状態で稼働しているような状態なので、そこで暴れまわれば当然エネルギーは枯渇する。
こんな状態で次の迷宮攻略などできるはずもない。
何とか再度小型化した彼だが、エネルギー枯渇でぐったりする。
慌てたユリアたちは、第三階層に戻り、まだ水面に浮いている魚をかき集め、それをとにかく内臓を取り除いて、焼いて焼いて焼きまくってエルに食べさせる。
それで少しは回復した彼は、ふう、ととりあえず一息つく。
『いやぁ~助かったわ。流石に大型化からの大暴れはエネルギー的にきつい。』
《あれだけの大暴れはぁ。》
《体自体が武器になるからドラゴンはしゅごい。》
目の前で暴れまわる迫力のあるドラゴンの映像を見て、視聴者たちは流石に驚いたコメントを送る。
ドラゴンが暴れまわるのをリアルタイムで見る彼らは流石に衝撃的だったのだろう。
見る見るうちに再生数も上がっているのが分かる。まあ、一種の寄生プレイと言われるかもしれないが、少なくともエルは現状にそれなりに満足はしている。
エルにとって一番恐るべきは、エネルギー不足になってヘロヘロになっている所に怪物たちに襲われてしまうことである。
竜という種族は基本的にその巨体と戦闘能力に応じるようにエネルギー消耗が激しい。特にエルのような若い竜はなおさらである。
そういった状況でも小型化さえしておけば、ユリアたちが抱えて離脱させてくれるはずである。あとは戦闘中にでも後ろから支援でもしてくれればこちらは文句はない。
とりあえず、魚を食べてある程度回復したエルは、ユリアたちの手で第二階層へとさらに運ばれていく。ここでバロメッツから生まれた羊を捌いた肉を大量に食べればエネルギー不足は解消されるはずである。
しかし、こちらとしてはこれ以上ダンジョン攻略を行うのは難しい。
第二階層に戻ったエルはさっそくストーンゴーレムたちに命じて食事を作らせていく。食事を作らせている間、ふとエルはユリアたちに対して気になったことを聞いてみる。
『そういえば、君たちどこに住んでるの?近くの村に宿でもあるの?』
休憩のために水などを飲んでいたユリアたちは、そのエルの言葉に、ええ、と頷く。
「え?まあはい。近くの村に宿があるんですが……。正直、森の中の開拓村で怪物たちからの襲撃もたびたびあるらしく……。村人たちもせっかくの開拓村を撤退するか、という意見もあるらしいです。まあ、開拓は厳しい重労働ですから、それに加えて怪物たちも出てきて防衛も大変となれば……。」
(それはいかん!!せっかく得たスカウトと人類社会とのコネを失うわけにはいかん!!その村を守るために何かをせねば!!)
がつがつとストーンゴーレムが作ってくれたバロメッツの羊の焼肉を貪り食らいながら、彼はそう心の中で決意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます