第7話 ゴブリン退治と蹂躙

 その一方、ゴブリンたちは喜んでいた。偶然自分たちの住処である洞窟を広げている中、偶然にも地下を掘り進んでいく中、石壁を破壊した先にこれほどの大迷宮に出くわしたのである。

 これほどの巨大さなら、自分たちの拠点として大いに役に立つ。

 人間どももそうそう入ってこれない、天候にも左右されない拠点としては最適な場所である。

 孕み袋もこちらに輸送して、本格的に根拠地を移すべきか、こちらのほうに様々な物資を移動しながらゴブリンリーダーは考え込んでいると、ふらふらふらと小型のワイバーンっぽいのが群れの中へと飛び込んでくる。

 今夜の食事にしろ、とゴブリンたちは手持ちの粗末な槍や剣で小型のワイバーンに対して攻撃を仕掛けようとする。

 だが、ゴブリンたちが集まってきた瞬間、途端にその小型のワイバーンは巨大化し、いきなり6mほどのドラゴンへと変化し、近くのゴブリンを踏み砕く。


『グガァアアアアッ!!』


 いきなり現れた巨大なドラゴンに対して、ゴブリンたちは恐慌状態に陥ってしまう。そのドラゴンは、ゴブリンたちをまるで親の仇と言わんばかりに蹂躙していく。

 踏みつぶし、横凪にカギ爪を振るいズタズタにし、悲鳴を上げるゴブリンを口で噛み砕き、ペッ!とその辺に噛み砕かれた死体を吐き捨てる。

(薄汚いゴブリンを噛み砕くのなど嫌だったがしょうがない)

 それはまさしく蹂躙そのものだった。

 そもそも臆病者であるゴブリンたちは真っ向面からドラゴンと戦うなど無謀なことをするわけはない。臆病者の彼らは、奇襲をかけられて完全に混乱状態に陥っていた。

 恐慌状態になったゴブリンたちはバラバラに逃げていくが、それを逃がさんと言わんばかりにエルは彼らを踏みつぶしていく。さらに逃げ回るゴブリンたちを踏みつぶし、かぎ爪で切り飛ばし、牙で次々とかみ砕いていく。

 周囲を取り囲んで攻撃しようとするゴブリンたちもいたが、それらはエルが振り回した強靭な尻尾の一撃で薙ぎ払われている。強靭なドラゴンにとって、まさしく全身こそが武器そのものである。

 人類という種族を敵に回すのは極めて恐ろしいと熟知しているが、相手が社会性を持たないゴブリンならば敵に回しても問題ない。コミュニケーションが取れない敵対的存在など彼からしてみれば絶対敵である。


《へぇ~すっごい》

《流石ドラゴン。迫力あるなぁ。》

《あれだけのゴブリンを一掃できるのは凄い。》


いきなりの予想外の奇襲で大混乱に陥っているゴブリンたちに対して、魔法戦士であるユリアは援護を行うべく、自らの魔術を唱える。


「『幻影作成』!竜の姿よここに!!」


それは、エルと同じドラゴンの幻影である。細かく観察すればそれが幻影であることは見抜ける程度の幻術ではあるが、大混乱に陥っているゴブリンたちにそんなことを把握できる余裕などない。

エルに加えて、もう一匹ものドラゴンが現れた(ように見える)に対して、大混乱に陥っているゴブリンたちはさらに完全に恐慌状態に陥る。

 恐慌状態になったゴブリンたちは自らの武器を捨てて、大迷宮と自分たちの巣穴を繋げた穴へと一斉に逃げ込んでいく。それを見てエルはふう、とため息をつく。


『全くゴキブリどもが……。我の迷宮に入るなんて百年早いわ。』


 そして、エネルギー節約のために小型化したエルは、ゴブリンたちが開けた大迷宮に繋がる穴を見つけると、そこに魔術を使用して第三層の大量の水を転移できる”門”を作り出し、ゴブリンの巣穴に水を大量に流し込んでいく。

 ちらりと偵察した結果、ゴブリンの巣穴はここよりさらに地下深くのため、十分水攻めも効果的なはずである。

 もしかしたら生き残りの女性の冒険者の孕み袋などもいるかもしれないが、そこまで救う義理もない。

 きちんと死ねるだけまだマシだろう、と考えるところを見てると、自分も大分ドラゴンの価値観に侵されているなぁ、と思ってしまう。

 だが、それでも実際に大迷宮内部に大量のゴブリンが入り込む事と、自らの良心とどちらと言われれば、やはりゴブリンの巣穴など塞いでおくに限る。

 大量の水を流し込んだ後で、土の魔術を使用してその穴を大量の土砂で埋め、さらにその土を魔術で石に硬化させる。これでそうそうは入ってこれなくなるはずである。


『よし、やるか。《土作成》!《土作成》!《土作成》!《石変化》!』


 水を流し込んだ後で、ゴブリンが作り出した穴を大量の土砂で埋めていく。

 そして、その後でその土を瞬時に石壁へと変化させ、ゴブリンの巣穴と大迷宮との穴を埋めていく。これだけの石壁ならそうそうゴブリンたちも破壊できないだろう。

はー疲れた。これでしばらくは何とかなるだろ、とエルは思わず安心していた。



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なお、今回のイメージBGMは、『Rhapsody Of Fire』の『 power of the dragon flame』になります。ラプソディーはいいぞ。

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