第10話 佐保の退場


「大砲ーーー!!」




大砲の絶叫に、チームメイトは沸き立つ。


加部のブロックが有効に働いていたのは、大砲がクロス方向にしか打てないから、


ストレートに撃てるようになった結果、当然、ブロックで止める事は不可能だった。


「畜生!」


「そもそも3枚ブロック揃えて当然の選手なのに、加部一人で止めれた事がおかしいしな」



19ー15



徐々に離されていく点差・・・

(あちゃー、こりゃ一本取られたねぇ)

みたいな雰囲気で、脆弱高校の面々は早くも『負け』を受け入れ始める。


「まだだ、まだだ!」


部長だけは、必死に叫んでいる。



「あの!」



「・・・さっき足捻ったんで、交代良いっすか?」



突然、佐保が手を挙げる。

困惑する監督と周囲・・・


「は?お前が抜けたら、誰が入るんだ」

「・・・えっと・・・六畳が居るでしょ、(我知也は無理でも)」


佐保は、足は腫れていないが、異様なほど汗をかいている。



「よし、交代!」




佐保は六畳の肩を叩き、ベンチへ行き座る。


「どうしたんスか?、佐保さん」


腹痛で撃沈している我知也に、『本当は足なんて捻って無い』事を見抜かれている気がして、気分が良く無い。



「色々あるんだよ」



佐保は、青い顔で下を向きそれ以上答えない。




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