第2話 武器を手に入れたがほんとに聖剣なのか?
目を覚まして辺りを見渡すと昨日と変わらない景色が目に入る。
とりあえず辺りにモンスターはいないようなので木の上から降りてみる。
今日こそこの森から抜け出して人に会わなければ死んでしまう。
空腹が限界に近いがとりあえず水を探しながらこの森を抜け出すために歩き始める。
しばらく歩くとなにやら洞窟のようなものがある。
(なにか役立つものがあるかもしれないな)
そんな淡い期待を抱きながら洞窟の中にゆっくりと入ってみる。
洞窟の中に入ると何故か明るい
本来であれば灯りなどないので暗闇のはずだが奥まで見えるほどの明るさだ、少し不気味に思いながらも奥に進んでいく。
5分ほど歩くと行き止まりになっている。
そこにはなにやら複雑な模様が描かれている黒い箱が置いてある。
他に何も無いのでとりあえず手に取ってみるが、特に鍵などがかかっている様子もないので開けてみる。
(せめてなにか食料でも入ってくれるとありがたいんだが……)
そんな期待をしながら開けてみると食料の代わりにとても綺麗な剣がでてきた。
食料では無いのが残念だがモンスターのいるこの森ではむしろありがたいのかもしれない。
せっかくだから貰っていこうと思いその剣を手に取る。
(ふ〜ん、今度は君がご主人なのか。)
「はぁ!?」
剣を手に取った瞬間頭の中に響く声に驚き声をあげてしまう。
それと同時に右手に鈍い痛みがくる、そして目を開けていられないほどの強い光が辺りを覆う。光が収まり目を開けると右手には箱に描かれていたものと同じ模様が刻まれていた。
「は?なんだこれ!?」
突然の現象に驚きを隠せない。
だがそんなことお構い無しにまた頭に声が響く。
(これで契約は完了だね!さあ、さっさとこんな洞窟からでて人を助けに行こう!)
そんな声が頭の中に響く。
「待て待て、お前はさっきからなんなんだ。頭に響く声といいこの変な模様といいちゃんと説明しろ!」
(え〜?まあ自己紹介は大事だよね!僕はいろんな人から聖剣て呼ばれてるものさ!人を助けるために作られた聖なる武器だよ!)
「いや意味わからんわ」
唐突な展開に混乱しながらも聖剣?を自称しているこの剣に話を聞くことにする。
しばらく話を聞いているとどうやらこの自称聖剣?はどうやら本当に聖剣と呼ばれる武器らしい。
この世界にはどうやら魔法と呼ばれるものがあり、魔法を使うためにみんな魔力を持っているみたいだ。
そんな中でも魔力と一緒に『聖気』と呼ばれるものを持つ特別な人間たちがモンスターを倒すために力の全てを込めて作り上げたのがこの聖剣らしい。
(そんなわけで作り上げられたのがこの僕なのさ!回復もできて、武器としての性能も超一流で適合した人に無類の強さを与えるのがこの僕!聖剣なのさ!)
そんなことを自慢げに語る聖剣に少々イラッとくるがここで疑問が残る。
そんなすごい聖剣がなんでこんな洞窟に放置されているのだろう。
この聖剣の言う通りの力を手に入れられるのならこんなところにあるはずないのだ。
(あー、それは簡単だよ。単純に僕に適合する人間がいなかっただけだよ。ずっと誰も適合しなくて気づいたら箱に入れられてこんな洞窟に捨てられちゃったんだよね!)
「なるほどな、じゃあ俺は適合したからこうやってお前と話ができてるわけなのか」
(そういうこと、右手の模様も完璧に適合できたから契約の証として刻まれたものだよ。でもなんで今更適合者があらわれたんだろ?)
聖剣の疑問も最もだが理由はやはりあれしかないだろう。
ずっとこの世界の人間に適合者がいなかったのに自分が適合できたのはきっと異世界人と言う理由しかない。
だが、これはありがたい。チート能力も渡されないで森の中に放り込まれ死を覚悟したがここにきて聖剣などというチート武器が手に入ったのだ!
ここから俺の無双物語が始まる!
(さあさあ!説明なんてもう終わりでいいでしょ?さっさとここからでて人を助けに行こう!)
「ここから出るがなんでそんな人を助けに行きたがるんだよ。俺は人を助ける気なんてないんだけど?楽してお金稼いで女の子からチヤホヤされてのんびり暮らすに決まってるじゃん。」
(何言ってるの!?聖剣に適合したんだから人を助けることは運命なんだよ!)
「はっ!そんな危険を犯してまで誰かを助けるなんて冗談じゃないぞ!」
(ふーん、まあ君はどうやっても人を助けるのは決定なんだけどね)
「は?どういうことだ?」
(僕と契約したということは僕の力が君に渡ったということだからね、僕の中にあった魔法なんかの力はもちろんだけど困っている人を見過ごすことができない力も君に渡ってるんだよね。)
「そんなの無視すればいいだけのことだろ。そんなこと言っても俺はやる気ないからな」
(あ、無視してもいいけど無視すると頭痛が始まって最終的には死ぬからね!それでもいいなら無視してもいいけど)
「はあ!?」
聖剣の言葉に驚きを隠せない。
つまり自分はこれから先この聖剣を持っている限り自分を犠牲にして誰かを助けないと死ぬと!?
(そんなめんどくさいの絶対ごめんだぞ!?)
そんなことを思うがあることを思いつく。
結局のところこの剣があるからそんなことになるのだ。
ならばこの剣を捨てればいいだけのことだ。森から抜けるのに不安は残るがそれでもこの先ずっとそんなことになるよりマシだろう。
「悪いが俺はそんな気はないんでな!また違う奴と人助けでもしてくれ!」
そう叫び聖剣を元々入っていた黒い箱に戻そうとする。頭の中に聖剣の声が響くが無視して箱に入れる。
まだ腕の模様が残っているがとりあえずこれは人を見つけてから解く方法を探せばいいだろう。
「さて、とりあえずさっさと洞窟からでて森を抜けるか」
(そうだね!早く人に会いに行こう!)
「は?」
右手を見るとさっき箱に入れたはずの聖剣がいつのまにか握られていた。確かに箱に入れたはずなのだがどうなっているのだろう
(いや〜残念だったね!僕には戦闘中とかに武器をすぐに手元に戻すために契約者の手元にすぐに現れる力もあるからね!逃れることはできないのさ!)
そんなことをニヤニヤと笑いながら楽しそうな声が頭に響く。
つまりこれでもう自分は聖剣から逃れる術はないのだ。
せっかく楽に無双して生きていこうと思ったのにその夢が呆気なく砕ける。
(さあ!早く人に会いに行こう!そして聖剣の契約者として相応しい人間になるために頑張ろう!)
(いや、これ聖剣じゃなくてただの呪われた武器じゃねえか!!!)
異世界転生して聖剣の適合者に選ばれたが逃げ出したい みそぎ @aiaisama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界転生して聖剣の適合者に選ばれたが逃げ出したいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます