欠けた冒険者

 トンの街まで馬車で移動する為にデデンの街の冒険者ギルドに冒険者達は集まっていたが、まだ職員より出発の知らせはなく、とにかくひたすら待つだけであった。


「まだかよ、馬車の準備は」

「朝には出発できるって言ってたのによ」


 冒険者達がそう言っている中、ようやくギルド職員が冒険者達に声をかける。


「皆様お待たせしました、ただいま馬車の手配が完了しましたので、パーティーを順番にお呼びしますので呼ばれた方から指定された馬車にお乗りください」

「お、ようやく来たか」

「待っていたぜ」

「それではまずは……」


 パーティーが順番に呼ばれ、馬車に乗り込んでいく中、ニラダ達も今の状況について話していた。


「いよいよだな」

「うん、ねえニラダ君、気のせいかもしれないけど、冒険者の数が減っているような気がしない」

「そりゃあ、現在も防衛の為に戦っている冒険者がいるからだろう」

「ううん、そうじゃなくてテリソンから街を守って帰って来た時よりだよ」


 ミヨモの発言を聞いてとりあえず周りを見渡すジャンもミヨモが抱いた違和感に気付いた。


「ああ、確かにそうかもな、じゃあここにいない奴らはどうしたんだ?資格はく奪を承知でクエストを外れたのか」

「違うな、そうではない」

「あ、カイルさん」

「どういうことですか?」


 テリソンよりハイバイの街を防衛した一部の冒険者がいない事に気付いたジャンはクエストを外れたと言うが、そこにカイルが現れて違う事を告げる。


「実は彼らの内の何名かは他の魔王軍の幹部がまだ侵攻しているのが気になり、防衛に回りたいとカーリソンギルド長にお願いしたんだ」

「それで防衛に回ったっていうのか」

「故郷の村を襲われている者もいて気が気でなかったんだろう、防衛側も膠着ややや押され気味なところが多いし、そっちにも少し回せるなら回した方がいいっていうギルド長の判断だ」

「そうなんですね」


 ニラダがカイルの話に納得しているとそこにガンディーが現れて少し愚痴をこぼす。


「気持ちは分かるんだけどよ、作戦の為の戦力が減るのは痛いな、じじいも最近は冒険者に甘いし、時代か?」

「師匠、だけど魔王復活を阻止しても街や村が滅ぼされたら意味ないし、防衛だって必要じゃないかな」

「そうなんだけどよ、せめて俺が作戦を告げる前にそう動いてくれよって思うんだよな」


 防衛が必要というニラダの言葉を聞いてジャンやティアが思い出したかのように言葉を発する。


「そういやあケン達もまだ防衛しているんだよな、大丈夫かあいつら?」

「リンダさん達も心配ね、相手は魔王軍の幹部だし、それに……」

「それに何だ?」

「お酒が飲めないストレスで味方に八つ当たりしてないか心配ね……」

「そこかよ!ま、まああれでも聖職者なんだしよ」

「そ、そうね大丈夫よね」


 友人や先輩を心配するティア達であったが、ようやくニラダ達も呼ばれ馬車に乗り込んだ。

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