離脱!カイルの覚悟!

 部下の魔物を斬った剣士が勇者であると考えるテリソンは逃がすまいと部下に周辺の捜索を命じ、近場に隠れているニラダにとっては包囲されているような状態になった。


 捜索範囲はかなり絞っており、隙をつく余地がないと考えるニラダは強行突破を考えるが、それに対してカイルは自分の考えを話す。


「2人共、奴らの目を欺きここから離脱する方法を考えたのだが聞いてくれ」

「本当ですか?それで、どうするんです?」

「簡単な話だ、私が奴らを引き付ける、その隙に君達は逃げるんだ」

「ちょっと待ってください、カイルさん1人で時間稼ぎをするって事ですか?」


 カイルが1人でニラダ達が逃げる時間を稼ぐと言い、ミヨモがそれについて口を挟むと更にカイルは返答をする。


「そうだ、さっきニラダ君の言った強行突破はミヨモ君が逃げ切れない可能性は高いうえに、下手をすれば3人共追撃を受けてしまう」

「確かに……」

「そして我々3人ではまともに戦えばテリソンを倒すのは厳しいだろう、3人共やられるのがオチだ」

「でも待ってください!3人でも無理ならカイルさん1人では抑えきれないんじゃ、他にも逃げる方法があるはずです!」


 ミヨモはカイルが1人でテリソンや部下と戦うのは無謀だと考え、他の逃走方法はないかと訴えるが、カイルより強く返事がある。


「もうゆっくりと考えている時間はない!君達と他パーティー、そして兵団と協力すれば奴らは倒せる、あとは頼んだよ」

「あ、カイルさん!」


 ミヨモの制止を振り切り、カイルは魔物の群れの前に姿を現すと、テリソンも反応をする。


「魔物達よ、私を探していたのだろう、相手になってやろう」

「貴様か我が部下の命を奪ったのは、もしや貴様は勇者ではなかろうな?」

「さあな、確かめてみるか?」

「皆の者、こ奴を仕留めるぞ!」


 テリソンはカイルへの攻撃を部下に命じ、カイルは剣を抜き、魔物達を斬っていく。


「カイルさん!」

「ミヨモ、行くぞ!」

「ニラダ君、カイルさんを見捨てるの!私、そんな……」

「ミヨモ……カイルさんの覚悟を無駄にしちゃダメだ!あの人は俺達に魔王軍の討伐を託したんだ!」

「ニラダ君……」

「行こう……」

「うん……ごめん、カイルさん、無事でいてね……」


 ニラダ達はどうにかその場を魔物達に気付かれずに離脱に成功し、ひたすら走って、ハイバイの街を目指していく。


 カイルは魔物をなぎ倒していくがあまりに数が多い。


「はあ、はあ、参ったな、これでは逃げる隙はつけそうにないな」

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