トラブルの末に

 ゲンに殴られた冒険者はその後の過剰報復が問題視しされ、ギルドの裁定により冒険者資格をはく奪され、その後は強盗殺人を犯して投獄されたのだ。その話を聞いてまずジャンが言葉を発する。


「強盗殺人で投獄か、Aランクからのものすげえ転落だな」

「だけどそれは彼自身が明らかに自らその道に進んだ、なるべくしてなってしまったのよ」

「資格をはく奪されたときに反省できなかったんだね……」

「……カールさん、もしかしたらゲンさんは武器を作らないのではなく?」


 ニラダは一連の流れからゲンは武器を作らなくなったのではなく武器を作れなくなったのではという疑問をカールに投げかけ、ニラダの疑問にカールが返答をする。


「そうです、その冒険者に負わされたケガが原因で武器は作れなくなったんです、それでも僕達を食わす為に日用品の刃物の依頼は受けていました」

「そうなんですか、そうすると冒険者の依頼を受けなくなったのは……」

「一度、日用品の料理用のナイフの依頼が冒険者から来たんですが、冒険者と知るやいなや親方は烈火のごとく怒り追い返したんです」

「その件がトラウマになったんですね」


 冒険者とのトラブル、それがきっかけで武器作りをあきらめ、冒険者からの依頼も断るようになってしまったゲンの話を聞き、ニラダ達もただ戸惑うばかりであった。


「確かにそこまで追い詰められてしまえば、冒険者に対する思いを鬱屈させるのも無理はない!」

「そうなっちまったのは同情する。だがなそれでドットの旦那を引き合いにニラダを責め立てるのは筋違いにも程がある!俺からすりゃあ単なる八つ当たりもいいとこだぜ!」

「それに関してはきっと鬱屈のあまり、ドットさんが自分の鍛冶ができて親方自身は何もできない事でそうなってしまったんでしょう、僕が親方に代わって謝ります。すいませんでした」

「あんたに謝られてもなあ……」

「ジャン!カールさん、あなたがゲンさんの事を話してくださり、無礼を謝罪してくださったお気持ちは私達にも伝わっていますからお気を悪くしないでください」

「はい」

「でも冒険者嫌いとケガじゃあアビジンの事はあきらめた方がいいよね」

「そうだな、もうここは帰るしかないな」


 ニラダとミヨモはゲンの心身の状態からもはや剣にアビジンを加えてもらう事はあきらめる話をしていたが、そこにカールが口を挟む。


「いえ、あきらめるのはまだ早いです!」


 カールがあきらめるのはまだ早いとニラダ達に言い放つ。その真意とは?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る