ギルド長カーリソン

 盗賊団の持っていたマジックボックスから盗品を取り出し、どの魔石が誰の物か分からず困っていたニラダ達だが、ジャンのユニークスキルであるお宝探索トレジャーサーチの効果で、それぞれの魔石が分かり、ニラダが順番に返そうとするが突如、盗品の受け取りを制止する声がギルド内に響く。


「な、何だ?」


 ニラダより自分の所有していたアイテムを受け取ろうとした冒険者が戸惑い周りを見わたすとそこには大柄の中年男性がいて、その男が冒険者に近づき、更に発言をする。


「待たぬかと言ったんだ!愚か者めが」

「お、愚か者……」


 突如現れた男に愚か者と罵られるが、男の発する威圧感に反論する事ができずにいた。そして男は周囲に自らの名を名乗った。


「初めて目にする者も多そうだから名乗っておこう、わしの名はカーリソン、このギルドのギルド長だ」


 男はカーリソンと名乗り、ギルド長でもあり、カーリソンの名を聞いて驚愕し、思わずカーリソンについて述べる者もいた。


「カ、カーリソンギルド長だって、かつては伝説の冒険者で、いくつものクエスト実績を挙げて、引退後はギルド長の座に収まったという。あの……」

「ほう、わしの現役時代を今の若者が知っていたとはな、光栄だが、今もわしの実績が語り継がれるようではいかんな」


 ニラダもカーリソンギルド長の話は聞いていたが、本人を目にしてその威圧感にただただ驚嘆するばかりで思わず声が漏れる。


「あれが、カーリソンギルド長か……」


 ギルド内の冒険者がカーリソンの登場に驚く中、カーリソンはニラダから盗品を返却されかけた冒険者に再度話しかける。


「確かに、その持ち物はお前の物のようだが、お前自身はこの者達が盗賊団を捕まえるまでの間に何をしていた?」

「え、ええっと武器を新たに作ってもらっていて、それを……」

「だがその間も情報を集める事もできたはずだが、お前はもちろん、お前のパーティーメンバーも動いた形式がなさそうだが」

「そ、それは……」


 クエストに対する動きが見えずにいて、その事を問い詰められて返答に窮していると更にカーリソンが畳みかける。


「冒険者たるもの、自らの失態を取り返す気概も見せずに、被害に甘んじ、他の冒険者に盗品を取り返してもらったのならばけじめとして魔石を謝礼として渡すのが礼儀ではないか」

「は、はい……分かりました」


 そう言って、その冒険者はニラダに魔石の何割かを渡し、他にニラダ達から取り返してもらった者達もニラダに魔石を渡したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る