補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

合同クエスト

　補助魔法しか使えなくてパーティー加入を断られたという話がギルドの冒険者にも広がっており、その事を2人組の冒険者から嫌味を言われたニラダはその怒りをクエスト達成で晴らすべく、彼らと同ランクの冒険者が挑めるクエストを紹介してもらうよう受付嬢にお願いするが、ソロでは無理だと言われる。

　落胆するニラダに受付嬢は合同クエストを提案し、合同クエストについてニラダが尋ねる。

「その、合同クエストって何ですか？」

「合同クエストというのはいくつかのソロ冒険者、ランクによってはパーティー同士で寄り合って1つのクエストに臨む仕組みです」

「その合同クエストが成立する条件って何ですか？」

「まず、ニラダさんがクエストの依頼を一旦確保して、合同希望の掲示板をこちらで貼らせていただきます。ただし、こちらとしても確保されっぱなしは困るので3日以内にどなたも希望しなかったら取り下げさせていただきます」

　あくまでも合同希望の確保したうえでニラダと共にクエストをしたいと現れる者がいなければクエスト自体に挑戦できないのだ。

「ニラダさん、どうしますか？」

「それじゃあします！」

「じゃあこの中から選んでください」

「ええっと、じゃあこれでお願いします」

　ニラダが選んだのは本来はパーティーで挑む『ダンジョン探索』というクエストであり、合同希望として確保する事にしたのだ。

「それでは合同希望として確保し、掲示板に貼っておきますので3日間お待ちください」

「分かりました、その間他のクエストって受ける事はできますか？」

「ええ、可能ですよ」

「それなら……」

　そこからまたしても魔物討伐のクエストをこなしてニラダは魔石を換金し、得た素材を持って鍛冶師のドットの工房まで赴いていた。

「おじさんいる？」

「おお、ニラダか。どうした？」

「いくつか魔物の部位を持ってきたけど、これで矢を作れるかな？」

「おお、どれどれ……、待ってろ今作るからよ」

　そう言ってドットはニラダが持ってきた素材を受け取り弓矢の為の矢を作り始めた。しばらく待っているととりあえず1本できたようで、ニラダに渡す。

「ニラダ、とりあえず1本できたし、試し撃ちをしてみたらどうだ」

「そうだね、壊れてもいい物ってある？」

「それならこの鉄くずをあの木にぶら下げてやるからやってみろ」

　そう言ってドットが工房の外にある木に鍛冶の過程でできた鉄くずをひもでぶら下げる。ニラダにとって人生初の弓矢だがその腕前は果たして？