10-2:燃える感情、冷えた彼女

10-2:燃える感情、冷えた彼女


 僕が彼女と連絡を再び交わすようになりしばらくして、かつて一瞬、本当に一瞬だけしか無かったはずの恋仲時代に、その短期間に見合わぬ大きさの未練が残っていた事に気が付き始める。高校に上がりたての頃にも「随分前からアプローチを受けていたのにも関わらず気にしないままで居続けて、凄く後になって本来見逃すはずが無いものをようやく見つける」というのがあったが、僕は何故いつもこうなのだろうか。あの時の恋愛感情も、この時の未練も、いつでも視界に入るぐらいの大きさだったはずだ。大きすぎてただの背景にでも見えていたのだろうか。


 そして、その後の展開さえもあの時とまるで変わらない。今更になって気が付いた感情に思いっきり振り回されるのだ。よく考えてみれば昔の女に強烈な未練を覚えて再アタックをかける男ってなかなか情けないように感じるが…当時はそのような事も気にならないぐらいに突き動かされてしまっていたらしい。中高生の時からまるで成長していない。

 こうして、昔は彼女から近づきにかかって貰っていたが、今度は僕から近づきにかかる形となる。


 だが、二度の別れ(しかも両方相手から別れを切り出される形)を経てもなお素敵な関係を夢見るどこか現実逃避気味の僕に対し、彼女はこれ以上無いというほどに冷めきっていた。そのように心が凍りついた原因として僕との一瞬の関係がどこまで影響を与えたかは定かで無いが、少なくとも僕を振ってまで手を取った次の男との付き合いがかなり厳しいものだったようであり、恋愛はおろか、異性との交流自体を強烈に拒むようになってしまっていたのである。

 もう異性との云々なんてものはロクな事が無いから、ずっと一人で生きて行くのだと、ハッキリと意思表示をされたのだった。

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