9-2:ようやく本領発揮する個性

9-2:ようやく本領発揮する個性


 中学時代、周りと明らかにズレていたにも関わらず、最後まで自身を普通と思いっぱなしであった。それは高校時代も全く変わる事は無かった。しかし大学生になって、ようやく少しずつ自身の異端性に気づき始める。同時に、少なくとも大学内ではそのままで何も問題無いという事も幾度と無く思い知る。

 この心境の変化により、今までもあまり周りを気にせず自分を出してきた身ではあったが、自分の出し方が変わったように思う。今までは何と言うか、「守り」の為の自己主張に近しいものがあった。相手に好きにされないように、全力で自分をぶつけて抵抗する、というようなイメージだ。だが大学に入ってからはもっと「攻め」の気持ちが入った。僕はこのような人間だ、と相手にしっかり伝える事によって、相手にも自己主張をして貰いやすくした上で、互いをよく知り手を取り合う、というようなイメージとなった。


「友達の作り方」等というのは、今でさえも具体的にこうすれば良いなんて答えられない。だが少なくとも自身にとって理想的なコミュニケーションの取り方のようなものは、この時にようやく理解が出来たと思う。初めてあやふやで無く確かな感覚として「人付き合いが上手くいっている」と感じた。家庭科部の時も、彼女と一瞬だけ付き合った時も、高校時代に狭いながらも何とか創ったコミュニティも、何ともあやふやなままで突き進んでいたから。これらの過去の関係の中にも今まで生き続けている上手くいったものがあるにはあるが、手応えを実感する余裕が足りなかったもので、大学になって振り返ってやっと「上手くいっていたのだな」と知った。


 大学には個性的な者が無限にいたが、だからといってより強い個性を発揮せねばという事も無かったのがこれまた有難かった。実際僕の場合、どういうわけか「青色が好き」という小学生みたいな個性が大いにウケた。服も鞄も靴も青いヤツと言われ、どこにいてもわかるとよくネタにされていた。それだけならまあ有り得るかとも思うが、未だにどうしてそのレベルまで到達してしまったか不明だがTVにまで出演させていただいたのだから、驚きだ。

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