9-1:変わっていて当たり前

第9章(大学時代①) ようやく築けた確かな居場所、ようやく気づけた異端の意味


9-1:変わっていて当たり前


 大学生活がスタートして真っ先に思った事は、「今まで見てきた世界がどれだけ狭かったか」。それに尽きる。中学生までは間違い無く窮屈さを感じていたが、高校生になった時にそれなりに世界が広がった気でいた。実際僕自身がかなり箱入りで育ったところがある為、間違ってはいなかったと思う。だが大学からの視界の開けようは凄まじいもので、ひとたび比較してしまえば今までとここからでは全く違うとしか言えなくなった。


 まず、いかに普通の事を普通に出来るかというような感じが驚く程に皆無なのだ。言ってしまえば特殊度合選手権である。型にどれだけ綺麗に嵌る事が出来るかでは無い。そもそもどんなとんでもない型を持ってくるかから始まるし、その型にさえ嵌らない。

 時には普通っぽく見える者もいるにはいるのだが、必ずほんの少しの時間で特殊な本性が見えてくる。まるであらゆる個性を見る事が出来る美術館だ。


 このような事もあり京大には変人が集まるとしょっちゅう言われているが、実際は「変人が集まっている」というより、「今まで見せられなかった、隠してきた変な部分を全部見せてしまっても問題の無い場所だから、皆こぞって見せ合っている」というような感じと言う方が正しいと思う。猫を被らなくて良い、見せたいように見せれば良い、そのような風潮がどこまでも広がっている。

 僕としてはこれほど過ごしやすい世界は無かった。変わっていて当たり前、むしろ異端ならば異端らしくあれ、誰も迫害はしない。そのおかげで余計な悩み等何も抱える事無く毎日を過ごせた。自信を持って自分を出せる環境は、学校でなかなか作って来られなかった華やかな思い出を量産してくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る