7-1:思ったよりは早かった切り替え

第7章(高校時代②)

開かれた別の幸せへの道、待っていたのは残酷にも絶壁


7-1:思ったよりは早かった切り替え


 彼女と「他人」になってしまった時は本当にどうしようかと思っていたはずなのだが、そこまで距離が離れてしまうと、どうしても思い出やら未練やら、色々なものが記憶から消え去っていく。「失恋は時間が解決する」とはよく言ったもので、最初はそんなもので解決するものか、と思っていても本当に一番の薬になるから凄い。しかも悲惨な散り方をすればするほど、よりその傾向があるように思う。

 新しい出会いというのも、沈んだ気持ちを引き上げる良いきっかけとなった。慰めてもらうにせよ話を聞いてもらうにせよ、誰かいてくれなければ成り立たない。新生活が始まってわずか数ヶ月という難しい期間ではあったが、ここは幸運だったと思う。


 僕が最初に世話になったのは、隣のクラスで少し特異な輝きを放っていた女子だった。初対面の相手にも臆せず話しかけられる高いコミュニケーション能力を持ち、僕もハマっていたアニメや漫画に詳しかったのもあり、すぐに打ち解ける事が出来た。しばらくして彼女と別れたてだという話をした時も、笑いながらこちらも彼氏とあまり上手くいっていないと返してくれたりして、色々な相談をし合える関係になるまでそう時間はかからなかった。この女友達がいなければ恐らくもっと立ち直るのに苦戦していただろうから、感謝している。


 ある程度復活した僕は、さらに交流の幅を広げにかかる。クラス内であまり誰とも話していない男子に声をかけたり、先述の女友達の交流の輪の中にも入ったりと、自分なりに過ごしやすい環境を整えにかかる事が出来た。相変わらずどちらかというと異端ではあるらしく周りからは「第三勢力」と言われていたが、もう高校生で且つ頭の良い人達が集まるクラスだったというのもあって、いじめられたりはまったくせず非常にありがたかったのも覚えている。

 こうして僕は、彼女の事を忘れて前に進み始めたのだった。だが、愚かにも忘れてはいけない事まで忘れてしまっていた。苦かったあの恋愛の味までも。

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