6-2:夢だらけの中初めて『結婚』の話をした

6-2:夢だらけの中初めて『結婚』の話をした


 恋愛感情というのは実に不思議なものである。

 優しい親に対する感情とも、一緒にいて安心する兄や姉に対する感情とも、関わりが多くよく話す親友に対する感情とも違う、心が穏やかでなくて、穏やかでないのにえらく幸福感があって。基本的に「不安定」というのはなかなか心配や恐怖心を煽りがちなものなのだが、これほど更に追い求めたくなる不安定があろうか。

 そのような不思議で煌びやかな感情を知ってからは、もう学校も違うから全然会えないのに、メールのやり取りだけでも非常に楽しかったのをよく覚えている。しかも更に凄いのは、ただでさえ「中学唯一の楽しみだった」と思うような彼女と部活動で過ごした時間達が、より一層特別な時間だったように感じてきた事。過去の思い出すらも美しく彩る、魔法のようなものだと思う。論理的に説明しがたい点も踏まえると尚の事。


 僕の高校生活のスタートダッシュは、彼女のおかげで極めて良い形となった。現地での人間関係はゼロからの再構築でなかなかハードモードだったはずが、それが全く気にならないぐらいに。心の余裕的な意味でも、実際に様々な連絡を取り合える仲という意味でも、「恋仲の者がいる」というのは力強い支えとなる。

 ほとんどの時間を味気無いどころか口に合わないと思っていた生活がここまで一変するというのは、夢を見続けているようなもの。

 そのような中で彼女のメールに書かれたワード「結婚」…言うなれば恋愛の最終目的地。君とならそこまで行きたい、と伝えてくれたのだ。僕も一緒に目指したい、と返し、見つけて間も無い大人への階段を、手を繋いで二人でどんどん上っていく。


 だが浮かれに浮かれていた僕は大事な事に気が付けなかった。気付くはずもなかった。夢というものは、覚めるから夢なのであり、その上正しく理解するのが非常に難しいものでもあるという事に。

 階段というのは、上ばかり見ているといとも容易く躓くものである。だがそれを知るのは、決まって一度躓いた後だ。

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