5-2:解散直前、「何となく」皆といたかった

5-2:解散直前、「何となく」皆といたかった


 十数年も昔の事を思い出せば、恐らく誰でも何か一つは「どうしてあの時ああだったのだろう?」と思う事があるだろう。「」としての意味合いではなく、「」という意味合いでだ。「後悔」としての意味合いであれば、厄介な事に何か一つどころか、いくらでも出てきてしまいがちなものだから。

 僕の場合の中学卒業時の「」は、何故か最後にクラスの皆と別れの挨拶をする際涙が止まらなくなってしまった事だ。前述の通り当時はまともに人間関係の作り方をわかっておらず、その中でもどうにか曲がりなりにも良い関係を築けていた者達は尽くクラスが別であった、彼女も含めて。その上、担任とはとてつもなく相性が悪く、けっこうな回数衝突も起こした。

 それなのにどうしてか、最後の瞬間だけいきなりどこから来たかもわからぬ感情が溢れ出したのである。あの涙の理由だけは、自分でも未だに全然わからない。他に涙していた者達と違い、泣くほどの思い出も作れていないというのに。まさかまるで周りが見えていなかった僕が「もらい泣き」をしたとでも言うのか、だとしたらいつそのように他人の感情を感じ取れるようになったのだろう。考えれば考えるほどわからなくなっていく。


 ただこの一幕は、決して取るに足らぬもので無かったのもまた事実だ。恐らく別れに対し全くの無関心であったら、さっさと帰って家でゲームでもしていた。当時はWiiが流行っていて、僕もよく遊んでいたから。しかし、卒業式の終わりに、同級生の皆との最後の思い出作りに参加したのだ。といっても全員で集まって何かする等では無く、ただ比較的話が出来る者達とダラダラ喋るだけだったが。

 そこで皆がやっていたのは「卒業アルバムの白紙ページにメッセージを残す」という事。あれだけ周りとズレていた割にはそれなりの数のメッセージを貰う事が出来た、大変有難い事に。逆に僕が誰に対して何を書いたかを少しも思い出せないのが悔しいぐらいだ。


 このイベントが物語の続きを紡ぐ大きなきっかけとなる。メッセージを貰った相手には彼女も含まれており、彼女は心を込めた言葉に、繋がりを維持する種メールアドレスを添えてくれたのだった。

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