4-1:いじめ問題がまだ軽視されていた時代

第4章(中学時代③)

相合傘に入れられる二人、あながち間違っていない現実


4-1:いじめ問題がまだ軽視されていた時代


 「いじめ」という言葉は今やテレビや新聞でよく目にするが、昔は全然聞かなかったものである。ただそれはあくまで「言葉として」というだけの話であり、実のところはいじめ自体は今も昔も存在している。携帯電話も普及していなかった時代、なかなか表に出なかっただけに過ぎないのだ。まあ、その明るみに出すツールである携帯電話すらも、時にはいじめの道具として使われてしまうのが厄介なところだが。


 僕は前々から記したように難儀な人柄であったのと、あとは肌が白く頼りない見た目をしていたというのもあって、よく嫌がらせを受けていた。具体的な内容についてはあまり思い出す気にならないので多くは語らないが、転校生にいきなり思いっきり殴られたのだけはなかなか忘れられない刺激的な体験だったとだけ書いておこう。

 しかしどうも皆僕だけでは飽き足らなかったようで、他にも相手を用意しにかかった。それがよりによって、彼女だったのである。


 僕の方はというと、今思えばまあ日頃の恨みを返されていたのかも、とか考えてしまうし、後の成人式では双方大人になっているのもあり盛大に和解したし、そもそも当時の段階で周りをあまりに気にしなさすぎて、余程の事をされない限りは「なんか楽しそうだなぁ」ぐらいで受け流していたので、そこまで大きなダメージを受けてはいない。まあ、自身にとって良いものでは無かったのもその通りではあるが。しかし彼女はそうでなかっただろう。というか普通はこの手の事はひたすら嫌な思いをするものだ。


 このような、かなりネガティブな意味で共通点があった僕達は、部活動での事もあり不慣れながら互いに近づいていく。そしてこれをきっかけとして、彼らの行動は「相合傘」という形で校舎の壁に現れるのだった。

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