3-3:無邪気な女王様、頭が空の下僕

3-3:無邪気な女王様、頭が空の下僕


 世の中には二種類の人間がいる。「ボケ」と「ツッコミ」だ。そう考えてしまうのは、僕がお笑いの本場と呼ばれる地で生まれ育ったからだろうか。でも、あながち間違っていないような気もしては来ないか。

 僕達をそれらで分類するとすれば、間違い無く僕が「ボケ」、彼女が「ツッコミ」だった。狙って又は天然で僕がボケをかまして、彼女が鋭くツッコミを入れる。人付き合いがよくわかっていなかった時から少しずつ何となくとはいえわかり始めた時まで、互いのこの立ち位置はずっと変わらなかった。そういえばぼんやりとした記憶だが、このやり取りを見ていた他の部員に「夫婦漫才」とか言われていたような…まあ当時の僕は「夫婦って何だ?」という感じだったのだが。


 特に印象に残っているのが、彼女はツッコミを入れる際、よく脚が出ていた。王道の叩きツッコミみたいな感じでよく蹴られたものである。その度に僕はというと、何をとは言わないが「見せるんじゃないよ」とかそんな応対をして、さらに蹴られて。もっと大人だったらアウトな物言いだっただろうが、まだ中学生であった為どうかセーフとしていただきたい。

 3年間一緒だった部活動、他にもっと彼女との素敵な思い出が出来る環境は整っていたはずなのに、何故か最も心地よかったのは?と考えてまず出てくるのがこのやり取りである。楽しい関係であったのは間違い無いのだが、何故これなのか。

 ただまあ、女王様が下僕の事を気にかけないように、少なくとも彼女にとっては気は楽だったのでは無かろうかとも思ったりする。逆に僕も僕で、若干下僕側の立場を喜んでしまっていたところがある。探り探りの中、ある種互いの理想の接し方を見つけられていたのかもしれない。


 そんなこんなで、色々と未熟で情けなくなる部分も多かったが、部活動はとても楽しかったものである。しかし悲しきかな、学校では部活動以外の時間も多くある。それらは言ってしまえば…双方にとって、なかなかの試練であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る