3-2:彼女が楽しんでいたのは単に家庭科?
3-2:彼女が楽しんでいたのは単に家庭科?
中学で彼女と接していたのが主に部活動だったのは間違い無いが、1年の時はクラスが同じだったし、それ以降も隣の教室に出向いてはちょいちょい会いに行っていた。まだ恋愛感情はおろか、友達という概念もよくわかっていないぐらいには未成熟だったのだが、恐らく彼女に対する興味が積もってきていたのだと思う。
メチャクチャやっていた僕がとても言えた事では無いのだが、彼女は見れば見るほど不思議だった。特に気になっていたのは「数日に一度、泣く子も黙るレベルで不機嫌」だった事。基本的に僕は物事を深く考える頭が無く、多少嫌な事があっても歩けば忘れるみたいなガキだったもので、周期的に噴火する火山のような彼女の特性については、事情も理解せぬままに何か新鮮だなぁとか呑気に思っていた。また、そんなだったから初めのうちはあからさまに噴火予告を出す彼女に迂闊に近づいては威嚇されて…をよくやっていた。ちなみに失礼なのを覚悟の上で補足すると、彼女の威嚇は漏らしかねないぐらいに怖かった。まあその迫力のおかげで、こんなズレにズレた僕でも次第に「ああ、今日はソッとしておいた方が身の為だ」と学習出来たのだが。
ただ一つ気になる事があり、あれこれと鮮明に残っている彼女との記憶をどれだけ辿っても、部活動の時に彼女が不機嫌モードだった覚えが無いのだ。部活動の日の朝にピリついていた時はあったとしても。僕はいつも「裁縫も編み物も、楽しそうにやるよなぁ」とか思っていたのだが、よく考えてみれば家庭科は部活動とは別に週1で授業があり、しかも割と自由度が高かった。単に家庭科が好きなだけなら、その曜日では彼女は機嫌を損ねなかったはずであり、実際はそんな事は無かった。
気持ちを汲みきれないバカだったが、そんな僕でも彼女の心の棘を抜き取るのに多少は貢献出来ていたのかもしれない。これが自惚れでなければ有難いが、真相を知るのは彼女のみである。
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