1-3:成長していく周りと、子供のままの僕

1-3:成長していく周りと、子供のままの僕


小学校高学年にもなると割と「好き」という言葉に意味がつき始める。青春の鍵の一種である、恋愛感情を入手するわけだ。教室での周りの会話も少しずつ色を帯びたものになっていき、異性の集まりに飛び込む者は男女問わず何かしらの形で冷やかされるようになってくる。

が、残念な事に僕はというと、それでもなお中学年の時同様「好き」=「褒め言葉のひとつ」程度の認識であった。この後に書くと言い訳がましくなるが、まあ成長速度というのは人それぞれだし仕方が無いといえば仕方が無い。だが、ここで成長が遅かった事が、その後の僕の足をしょっちゅう引っ張るのをわかってからだと、どうしても苦笑いが抑えられないものだ。


彼女ともう一度クラスメイトになっていたら、青春の鍵は手に入っていたのだろうか、と時折頭にちらついたりするが、まあ実際のところ多分そうはいかなかっただろう。何せ僕はあまり周りが見えていなかったから。そもそもクラスメイトとしっかり関わりを持った覚えが無い。なんてったって本気で「一人で生きている」と思っていた身だ。勝手に周りの皆の存在を消してしまっていたのだ。このように考えれば考えるほど、逆に小学校高学年で彼女とクラスメイトにならなかったのが正解に思えてくる。魅力を感じて貰えた気がしない。悪い面が彼女の眼に映りまくるぐらいなら、見られないままだったのを幸運だと思うほかない。


フィクションというのはいつも「華やかなところ、美しいところ」がピックアップされるものだ。実際はこの時のような、泥臭い時間がつきものだ。厄介なのは、小学時代という事もあり、泥臭かったなぁと思うまでに十数年かかってしまうという点だが。

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