第49話 if…… 2
取り敢えず家で男友達と遊ぶとしたらゲームだろ?
村橋君が腰掛け、僕は一緒にゲームをする為にテレビの電源を入れた。
光「なんかやりたいゲームある?」
村橋「これが良いな!」
取り出したのは僕の得意なレースゲームだった。
僕は少し乗り気になってゲームをセットする。
五分後……。
光「お前強いなぁ!!」
村橋「だろ? このゲームは自信あるんだよ」
すでに、僕は村橋君と打ち解けていた。
その証拠に村橋君をお前呼ばわりだ。
よく漫画とかで、優れた剣士はお互いの剣を交えると分かり合えると言うがそれを体現していたのかもしれない。
一度ゲームを交えると分かり合い仲良くなる。
もしかしたらゲームは世界を救うのではないだろうか?
でも、同じレベルじゃないと分かり合えない気もするな……。
そんな事を考えながらしばらくゲームに熱中していた。
……一時間後。
気付けば旧知の仲のようになっていて、僕もいつの間にか村橋君の事をケンと相性で呼んでいた。何度か『ケンじゃなくて賢治だって』と言われたが僕は無視してケンと呼んでいる。
実はケンが家に来て初めて名前を知った。
正直仲が良い相手以外は興味が無いから名字だけで困ることが無かったのだ。
そして何度も言うが僕は興味の無いことに関しては物覚えが悪い。そもそも覚える気が無い……。
僕が『そういえば名前知らないから教えてよ』とケンに問いかけた時は呆れた顔をしていたな。
途中からレースゲームに飽きて格闘ゲームをやってみたがこっちもなかなかのものだった。
ふと気付けばいつの間にか窓の外が赤色に染まっていた。
もうそんな時間か……。
ケン「そろそろ終わるか……」
光「えぇー。もう一回だけやろ?」
ケン「だーめーだ。オレがおばさんに怒られる」
光「ちぇっ! つまんねーの……」
ケン「今度はオレん
光「えぇ、面倒臭い……」
ケン「なんでやねん!? 面倒臭いってお前……じゃあオレがまた来るよ……。あと……、ありがとな」
光「ん? 何が?」
ケン「……まぁいいや。気にするな」
ケンは笑いながら玄関へ向かった。
僕も一緒に玄関まで行きケンの見送りをしてから部屋へ戻る。
ケンが帰った後にもう一度さっきの会話を思い出す。
何がありがとうなんだろ? 変なやつ……。
「相変わらず鈍感だなぁ☆」
だって分からないんだもん。しょうがないじゃんか。
「でもそれが君の良いとこかもね☆」
ギルのせいで余計に分からなくなる。
まぁいいや。興味が無い事への無関心を全開にして頭の中のどうでもいいボックスに収納する。これでもう思い出す事はないだろう。
僕のどうでもいいボックスの中身は興味の無いことの墓場みたいな感じで完全に永眠状態になる。
ここへ収納された記憶が復活する事はもはやないだろう……余程のことがない限り……。
さて、まだゲームをやり足りないのでもう少しだけやろうかな……。
格闘ゲームで二回程コンピューターと対戦してみたが物足りない。
ケンと対戦した方が面白いのは当たり前だ。
分かっていたがどうしようもない。
ギル! 一緒にゲームしてみる?
「む〜り〜☆」
そうだよなぁ……。
聞いた僕が馬鹿だった。
ギルは直接この世界に干渉する事は出来ない。
間接的に僕という媒体を使って干渉するのは可能だ。ギルの助言通りに僕が動けば間接的にギルが干渉している事になる。
それに例えば僕が
だがそれには僕のレベルがまだまだ足りない。
そしてどうあがいてもギルはコントローラーを持てない。
どっちにしろギルとゲームをする事は不可能なのだ。
あーあ。つまんないなぁ……。
「ケン、強かったね☆」
あぁ、強かった。
時間が経つのが早すぎて満足しきらなかった。
ケンとなら何時間でも遊び続けられる気がするよ。
「友達増えて良かったね☆」
最初は面倒臭いと思っていたが結果だけ見れば友達が増えて良かった。しかもゲームが上手いというオマケ付きだ。
「本当。君より強い人始めてみた☆」
やかましぃわ……。
確かに格闘ゲームで五連敗したのは初めてだ。
まさかあんなに強いとは思っていなかったからビックリした。
それでも善戦していたと自分では思っている。
その後僕が五連勝しているから今回は引き分けだ。
そういえば最近クラスメイトの中ではお笑いが流行っている。
なにかあれば『もうええわ』とか、『なんでやねん』とか言っている。
誰が流行らせたのか分からないが、そのせいでほとんどの男子がエセ関西人みたいになっていた。
授業で答えを間違えれば『なんでやねん!』
もし答えが正解でも『まいどおおきに!』
これはこれでクラス全体が和み笑いも取れている為、若ちゃん先生は何も注意せず黙認中だ。
まぁしばらくすればまた違う事が流行るだろうから、そっとしておこうとの考えもあるんだろう。
その日の夜寝る前に思い出した事がある。
ケンが家に来るといっていた時、ギルの『楽しみだね』の言葉。
多分ケンがゲーム好きってのをギルは分かってたんだろうな。
だから僕が乗り気じゃないの分かっているはずなのにあんな事言えたんだ。
もしあの時、ギルがいなかったとしたらケンを家に呼んでいたのだろうか?
そもそも、ケンは学校へ来ていただろうか?
寝る前にこんな事を考えてしまった為に寝れなくなってしまった。
すでにギルはこの世界に干渉しているのだろう。たとえ僕の行動の結果だとしても、僕にしか視えないギルがこの世界に干渉出来ている。
ケンが友達になったのは僕の中でギルの存在証明へと繋がるのだ。
それだけで少し嬉しい気持ちになった。
例え一緒にゲームが出来なくても、確かにギルは僕以外の少年を一人助けたのだ。
だから、ケンの『ありがと』は僕では無く、ギルにこそ相応しい……
そこで僕は寝落ちした。
次の日の朝、僕は夜に考えていた事はもう忘れていた。何か考えていたのは覚えている。
でも思い出せない。
こんな時は自己解決済みなので多分どうでもいいボックスに収納でもされているのだろう。
顔を洗っていると、
「ありがと☆」
ギルが突然、僕に感謝してきた。
意味が分からない。『何が?』と問い返すがギルは『なんでもないよ☆』とまた意味の分からない事を言ってきた。
またどうでもいいボックスに収納だな。
そんな事を思いながら何故か気分は良かった。
誰もいない洗面所で僕は声を上げた。
光「よし! 今日も一日頑張るぞ!」
顔が視えないギルが笑っているような気がする。
今日は多分良い日になるな……。
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