第38話 危険と機嫌と棄権 9
さて、ギルのお陰で助かったのは事実だがどうしたものか……。
時間的にはまだ一秒も経過していないはずだ。
どうしよぉ……。
「どうもこうもないんじゃない?☆」
そうだけどさぁ……。
「また最初からゲームすればいいんじゃない?☆」
ギルには僕にとってのセーブデータがどれほど大事か伝わっているはずだ。
それを簡単に諦めろとギルは言う。
まぁ諦めるしかないのも理解っているのだが……。
「じゃあ鉄拳制裁だ☆」
それはダメ!
相手は女の子たぞ!
「なら許してあげよう☆」
そうだね……。
よし! 決めた。
悪いのは僕。自分自身の管理不足が原因だ!
しかも由良がワザとやった訳じゃないのも明白。
「決まったね! じゃあいくよ! そして時は動き出す☆」
ちょっ! それも僕の台詞!
僕は数秒の沈黙を破り由良に言った。
光「別にいいよ。またやればいいだけだし」
優理「えっ!」
由良よりも先に優理が反応した。
とても信じられないといった顔で目を丸くしながら僕を見ている。多分心の中では『あり得ない!』って叫んでいることだろう。
由良「そうなの?」
光「うん。そうなの。だから大丈夫」
由良「良かった。優理君がすごく焦ってたから怒られるかと思ってドキドキしちゃった」
優理がまだこちらを見ている。
何か言いたそうにしているから近づいて耳元で教えておいた。『優理達だったら絶対に許さない』と……。
いつも通りの僕のその一言で優理は安心したようだ。
優理「よかった。やっぱりひかるくんはひかるくんだった」
普段の僕を知っているから信じられなかったのだろう。
命の次に大事なものを消された事に対して許した行為が……。
でもお兄ちゃんも人間なんだ。ちゃんと成長するんだぞ!
ちょっとは優理達にも格好良いところを見せられたかな? そう思いながら僕は由良と話をしようと試みた。
光「ところで由良ちゃん。ゲームどうだった? 面白かった?」
由良「ええ。よく分からなかったわ」
光「えっ!」
由良「だってなんだか単調でたまに変なの出てくるけど、意味が分からないからボタンをポチポチ押してるだけだし……」
変なのって……。多分敵のことだと思うが、アクション好きだったら敵を倒していくゲームなら面白いはずなんだけどなぁ。
光「もうちょっとやったら面白くなるよ」
由良「そのゲームは飽きちゃったわ。こっちのゲームにしましょ」
流れで違うゲームをやることになってしまった。
作戦失敗だ。
いや、一緒にゲームを出来るから成功かもしれない。
しばらく二人で同時に出来るアクションゲームをやっていたのだが、一つ分かった事がある。
由良は日向よりもゲームが下手だった。
知識は豊富だがゲーマーとしての才能はあまり感じなかった。嬉しいのか悲しいのか……。
期待していた分悲しくもあるが、僕よりゲームが上手かったらという不安もあった為、ホッとしたのが本音かもしれない。
でも女の子としてのゲーム友達は貴重だ。
由良の事は大事にしよう。
そして雅も実はゲームをやるという事が判明した。
しかもRPGゲームだ。
なにやら行き詰まってゲームが進まないとの相談を受けたのだ。
敵が強すぎて進むことも後に引くことも出来なのだと。
かなり難易度が高そうなゲームだが、僕ならなんとか出来ると思い少しだけやらせてもらう事にした。
一通りゲームの仕組みの説明とどういった状況か再度確認してゲームを始めた。
普段RPGゲームをやる際には集中するのだが今回は別だ。
なるべく自分の世界に入りこまないように心掛けながらコントローラーを握る。
さて、どんな感じかなぁ?
話によるとダンジョン内でセーブしたは良いが、回復アイテム等の所持数が少なくギリギリの状態だとのことだが……。
うん。
厳しいな……。
三人パーティーでその内二人のHPが1しかない。
ほぼ壊滅状態だ……。
そのまま一度敵と戦ってみるが全滅してしまった。
無理ゲーだな。
全滅してもお金が減る等のペナルティは無いがHPが全員1になってしまった。
一度リセットしてやり直す。
そして何度か敵と戦ってみると倒しやすい敵がいる事が分かった。
僕は倒せる敵が出るまでリセットしてレベル上げ狙いでいくことにした。
結局こっちのキャラのレベルの低さがゲーム難易度を上げているだけっぽいので、レベルさえ上がれば大丈夫だと思ったのだ。
敵を倒してはセーブ、倒してはセーブを繰り返し頑張った結果なんとか簡単に敵を倒せるところまでレベルを上げられた。
これでもう大丈夫だと雅に説明して、なんでレベル上げをしてなかったか聞いてみた。
雅「だってレベル上げするの大変だから」
……なるほどね。
良く考えるとそうなのかもしれない。
普通の子供達はゲームは一日一時間しか出来ないという謎ルールが適用されているらしい。
たった一時間で何が出来る!?
今のレベル上げでも二十分以上はかかったぞ……。
まぁ、取り敢えず僕のメンツは保てたので良しとしよう。
その後もゲームに限らず色々な事をしてみんなで遊んでいたが夕方になると雅と焔が家に帰る支度を始めた。
いつもは両親が迎えに来たら帰宅時間なのだが、今日は家族で来ている為暗くなる前に帰るとのことらしい。最初こそ『帰りたくない』と二人共駄々をこねていたが、『明日の夜は泊まっても良い』と約束する事で納得したのだった。
庭に出て二人が車に乗り込み、僕は見送りをしてから家に戻った。
そしてお祖母ちゃんの家に残った僕達は順番にお風呂に入ることになった。
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