第35話 危険と機嫌と棄権 6
まず僕は最初の任務を遂行すべく
そう最初の任務は食事だ!
先ほど起きた瞬間からお腹がペコペコだった。
辺りを見渡すと誰もいない。
だが、隣が仏壇の部屋でテーブルの上にはすでにお茶碗とかが逆さまにして置いてある。
昼ご飯の準備は出来ていそうだ。
田舎の家はとにかく広い。
何部屋あるか分からないぐらい……。
ぱっと思いつくだけで、ざっと十部屋以上はある。
しかも全ての部屋の境目が
襖を全部開けるとすごい開放感になるのだ。
現在四部屋の襖が全開放されていて、そこだけで1件分の家が立ちそうな広さだ。
作りとしてはほとんど平屋みたいなものだが二階建てになっており、二階の部屋が二部屋ある。
しかも二階の部屋はそれぞれ独立しており、階段がそれぞれの部屋へ続く廊下から一つずつある。
要するに階段が二つある。
普通の家では考えられない構造なのだ。
一言で説明するなら秘密基地みたいなものだ。
この家に住みたいかと問われると、ゲームさえ出来るなら間違いなく僕の返事は「住みたい」だ。
更に外には庭があるのだが、何本もの木が生えている。
分かるか?
庭に何本もの木だぞ?
木の高さは家より高いんだぞ?
僕も自分で言ってて理解が出来ない。
とにかく大きい庭がある。
さて何処を探そうか?
僕は起き上がり、まずは茶の間へ向かった。
茶の間には子供達が集まっていて、何やら遊んでいるようだった。
優理達と従兄弟達だ。
光「おはよー」
優理が一番最初に気付いて手を振ってくれた。
他のメンバーも『おはよー』と返してくれる。
従兄弟達は女の子三人と男の子一人。
そこに優理と力斗が加わって丁度三対三の合コン状態だ。
実際には男組と女組で分かれて遊んでいるだけなのだが……、僕が乱入するとあっという間にその場は戦場になった。
まずは優理が面白そうなパズルをやっていたので、『貸してー!』と言いながら無理やり取り上げた。
もちろん優理は泣き出すのだが、お構い無しだ。
従兄弟達もそれを見ているが、『またか』と内心思いつつも誰も文句は言ってこない。
みんな知っているのだ。
この後どうなるのか……。
優理「ゆうりくんのおもちゃとられちゃった」
優理が何か言っているが、僕はすでにパズルに集中している為その声は届かない。
数秒後、頭に何が飛んで来た。
そう、
そう言われた時すでに僕は半べそ状態だった。
僕は泣きながら『はい』と返事をした。
いつの間にか起きてたのか……。
まだ寝てると思ったのに。
まぁ僕が起きてきたのと同じぐらいのタイミングで起きたのだろう。
この一連の流れは従兄弟達の中でもすでにスタンダード扱いになっており、事件でもなんでもない普通の出来事だった。
一通りおやくそくが終わり、またみんな遊び始めようとしたが、
その一言でお昼ご飯を食べることになった。
どうやら僕が起きるのをみんな待っていてくれたらしい。
仏壇の部屋に集まりみんな各々の場所に座った。
長方形のテーブルが二つ横並びになっており、高さが膝まで無いぐらいで座布団が敷いてある。
大人六人、子供七人が座れる広さがあり、大人数で一緒に昼ご飯を食べる。
それだけでも楽しくなる。
そして、夏の昼ご飯は必ずそうめんが出てくる。
このそうめんがやたら美味しい。
なんでも、二日前から
鰹と昆布と椎茸の自家製出汁だ。
椎茸そのものはあまり好きじゃないが、そうめんの出汁としては最高に美味しいのだ。
そう、出汁がいかに大事なのか?
僕は知っている。
昔、
ワカメスープが大好きで
嫌いなものが入ってない特別ワカメスープ。
さぞかし美味しいはずだ!
とても楽しみにその特別スープを口の中に一口入れた瞬間、僕はビックリして吐き出しそうになった。残念ながらいつもの美味しいワカメスープには到底敵わない味だったのだ。
玉ねぎが無いだけでこんなに不味くなるのか!?
それ以来、料理に関しては
さて、テーブルの上には予想通りそうめんが並べられている。
みんな揃って『いただきます!』の合図と同時に僕はそうめんを流し込んでいった。
お椀に椎茸が残っているが苦手なのでそのままおかわりをして二杯目に手を出す。
結局三杯目でお腹がいっぱいになり、大皿に盛り付けてあった漬け物等を少しだけ食べて『ごちそうさま』をした。
他の子供達はまだ一杯目だったり、二杯目の途中だった為、子供の中で僕が一番だった。
僕は一番が好きなのだ。
自分で勝手に一番の称号を与え満足する。
よし。
今がチャンスだ!
僕はそそくさと茶の間へ移動した。
そしてそこに置いてあったパズルを手に取り思う存分楽しむ。
これなら誰にも文句は言われない。
まだみんなご飯中なのでやりたい放題だ。
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