第30話 危険と機嫌と棄権 1
寝不足気味の朝から大きい声はちょっと辛い。
エンカウント事件からしばらくは平和な我が家に幸せを感じていたのだが、時間が経つと
当たり前の事に幸せは感じない。
人間なんて所詮そういう生き物なのだ。
そんな当たり前の中でも、変わった事がある。
気を使ってくれているのだろう。
かわりに
絶対に八つ当たりだろ?
そう思いながらも、平和な毎日だった。
もう一つ変化があった。
ギルがレベルアップした。
膝の辺りまで視えるようになったのだ。
そのせいで足だけお化けが更に目立つようになった。
今までは下を向かなければ視界に入らなかったのだが……、今はガッツリ視界に入ってくる。
まぁ、足だけなので気にしなければいいのだが、このままレベルアップしていくと頭だけ無いお化けになるのではないだろうか?
そうなると完璧に
最近は、もしかしたらそれを見越しての長期的なイタズラなのかもしれない……、そう思うようになっていた。
そして、レベルが上ったということは、ギルの力が強くなったということでもある。
なんと! 時間が止められるようになったのだ!
ついに
ちなみに、好きな漫画の好きな技の名前だ。
厳密には時間が止められる訳ではなくて、ギルとのやり取りが超高速で出来るようになっただけなのだが……。
それでも一秒間に、十秒分ぐらいのやり取りが可能だった。
問題は乱用すると目茶苦茶疲れるってことかな。
初めて使ってみた時は楽しすぎて三十秒間ぐらい
連続してギルとやりとりしてみたが、その後頭が痛くなってしまったのだ。
その為、ギルからはあんまり多用してはダメと言われている。
どうやら、ギルとのやり取りの際に僕の集中力を強制的に高めて時間の流れが遅く感じるようにしているらしい。
だから実際に僕自身が止まった時の中を動けるのではなく、スポーツ選手が集中して時間の流れがゆっくりに感じるとか、死ぬ瞬間に走馬灯が流れるみたいなものなんだろう。
結局のところ、時間停止ではなくて思考加速だな……。
まあ、そんな事はどうでも良くて……、
格好良いから
ギルに向かって、ザ・ワールド! って叫べるだけで充分満足だ。
さぁ、そろそろ起きるか……。
昨日の夜もゲームのやり過ぎで寝不足だが、流石に起きないわけにはいかない。
光「おはよー!」
僕は起きたことを伝え服を着替える。
着替え終わり寝ぼけていた頭が起きてくるとワクワクしてきた。
今日から田舎のお祖母ちゃんの家にお出かけだ。
とは言っても、実際には明日から三日間なのだが……。
立花家の里帰りは昔から夜中に出発と決まっていた。
夜中に出発する理由は色々あるが、一番の理由は車で移動しやすいからだった。
昼間だとどうしても渋滞に巻き込まれ時間がかかる。そして世界を自分中心で回している
もし渋滞に巻き込まれでもしたら、出てくる言葉は『おめぇらがチンタラやっとるせいやぞ』と
それは違うだろ? とツッコミを入れたくなるが、
それに運転出来るのは
その為今日の夜……、いや明日の午前一時ごろ出発なのだ。
夜中のドライブ。それだけでも普段と違うビッグイベントだ。ワクワクしない訳がない。
取り敢えず朝ご飯を食べ、詩織と雛に会いに行くとするか……。
世間のお子様は夏休みだった。
8月の猛暑に立ち向かいながら詩織の家に辿り着く。インドア派の僕には外の気温が死ぬほど辛い。さっさとクーラー完備の部屋に入らないと溶けてしまいそうだ。
エンカウント事件から一ヶ月ぐらい経っただろうか?
その間に夏休みに入り、夏の宿題を午前中にやるのが日課になっていた。
今日は詩織の家で集まって宿題をする予定だ。
雛も来ているはずなのだが……、どうやらまだらしい。
珍しいな。
光「雛まだなんだ?」
詩織「うん。なんか風邪ひいたっぽくて……」
光「じゃあ今日は来れない感じ?」
詩織「そうなの。だから今日は二人で宿題しなきゃだよ」
雛が居ないのは痛手だ。
社会の宿題が書き写せない……。
始まる前から憂鬱になってきた……。
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