第27話 アナザーワールド 13

 ちょーーっと待て……。

 もう一度聞くが、僕が、誰に、攻撃した???


「だ、だから〜。君が、ラスボスに、攻撃? した……かもぉ……☆」


 ありえない!

 絶対は無いが絶対にそれは無い!!

 そもそもエンカウントキルって現実世界で使えるのかよ……。

 どう考えても無理だろ!?

 昨日だけ異世界転生してたとでも?


「あはは。まぁ、終わった事だからジタバタしてもしょうがないし、もうちょっと先まで思い出してみて☆」


 キーン、コーン……。


 あっ、授業が終わった。

 なんだか大変な事になってきた気がする。

 少し休憩だな。


「光君、大丈夫?」


 この声は、詩織だ。


光「うん。なんとかね」


詩織「心配したよぉ」


光「ごめんね」


雛「本当に大丈夫?」


 雛も心配そうに覗き込んできた。


詩織「なんかあったの?? 教室に入って来た時の顔やばかったよ! 先生と話してたら泣いちゃうし……」


光「うーん。もう大丈夫……だと思う。ちょっとラスボスに攻撃したっぽい」


 二人に意味不明な返答をするが、嘘ではない。


詩織「えぇー! もしかしてゲームの話?? また遅くまでゲームしてたんだ」


光「ま、まぁそんなところかな……」


雛「ほんとにそうなの?」


 今日は雛の方が感が鋭い。

 本当はちょっと違うがリアル人生ゲームという意味では現実世界もゲームみたいなものだ。

 今回はちょっとミスってラスボスに攻撃したことが原因っぽい。

 嘘じゃない。


光「うん。ちょっとミスっちゃったみたい」


雛「?? ゲームで?」


光「そっ。ゲーム」


雛「ふーん。なんだかなぁ……」


詩織「ゲームなら大丈夫だよ。ピナ心配しすぎ」


 詩織、ナイス!

 もしかしたら詩織は詩織で、もう大丈夫な事に気付いての対応かもしれない。


 お嫁さん達、優秀過ぎないか?

 このまま行くと本当のお嫁さんになりかねないな……。そんな事を思いながら心の中では詩織と雛に感謝しておく。


「お嫁さん達、本当に心配だったみたいだよ☆」


 分かってる。

 ギルがからかいながら教えてくれた。

 でも、ありのままを説明するのはちょっと大変なのでこのままでいい。

 それに本当の事知ったらもっと心配される気がする。


「多分心配で夜も寝れなくなるね☆」


 だろ?

 それにまだ真相が隠されてる中途半端な状態だ。

 これ以上心配をかける訳にもいかない。

 次の授業でケリを着ける。


「ガ、ガンバッテ☆」


 なんでそこでカタコト!?

 少々不安が残るが……思い出してみるか。


 そうこうしてる内にチャイムが鳴り次の授業が始まった。

 意識を集中させ昨日の事を思い出す。

 たしか父親ラスボスを発見して喜んでいたら月子ははが悲しい顔で、不思議に思ったんだ。


 あの時何があった?

 月子ははの手を引っ張り走る僕。

 そして父親ラスボス遭遇エンカウント

 悲しそうな顔で褒めてくれる月子はは


 そして父親ラスボスは……、


 あれ?

 おかしい……。

 いや、もしこれがゲームならおかしくない……。極々普通だ。

 昨日の世界線がおかしいのか?

 

 ラスボスの姿を思い浮かべる。

 そう……、ラスボスにはお供がいた。

 魔性の女Aと魔性の子供Bがお供として一緒に遭遇エンカウントしていたのだ。

 ゲームなら当たり前過ぎる光景だ。

 お供の敵二人を倒し、ラスボスのHPを半分ぐらいまで減らす。

 そうすると第二形態にボスが変形する。

 攻撃パターンも変わりボスの本領発揮。

 なら、普通のことだったのだが……。


 まぁ、なんだ。あれだ。

 現実世界の父親ラスボスの隣に優理と同じぐらいの年齢の子供(たろう仮)がいて、その隣に月子ははと同じぐらいの年齢の女の人(さちこ仮)が立っていた。そして三人で横並びに手を繋いでいたのだ。

 はたから見たらまさに仲の良い家族だ。

 

 えーと……、昨日僕は異世界にいた?

 そう。異世界……アナザーワールドだ。

 異世界だからそういうこともある。

 しょうがないよね。

 昨日、僕は父親ちちが父じゃなかった場合の世界にいたんだ。


 一通り現実逃避してみた後に、昨日の回想に戻ってくる。


 父親ラスボスを前にして一歩踏み出す月子はは

 間合いの取り方は完璧だ。

 そして月子ははからの先制攻撃。


月子「あら、今日はお昼寝するって言ってたわね」


父親ラスボス「お、おう」


月子「人混みなんか行ってもつまらないって」


父親ラスボス「お、おう」


月子「あら、ご挨拶が遅れまして。うちの主人がお世話になってます。家内の月子です」


魔性女さちこ「え、えぇ」


月子「ではわたくしは子供達もいますのでこれで。御機嫌よう」


 月子ははの一言一言には思い出すだけでも身震いがするほどの圧があった。

 そして、その眼光には全てを破壊するほどの力がこもっていた。


 僕は全てを理解した。

 父親ラスボスはやはり僕の父であり、月子はは以外の女と遊んでいたなのだ。

 そして運悪く僕が見つけてしまった。


 エンカウントキル発動だわ。

 意図せずに攻撃したわ。

 やばいわ。これ……。


 まぁ王様には妃が何人かいる時代もあったことだし、ここは穏便になら……ないよなぁ。


 父上様ぱぱうえさまはなんてことしてやがるんだ。

 僕達がここに来ること知ってただろ?

 普通、他の女と遊びに行くなら別の場所に行くだろ?


 モテるのは分かる。父親ラスボスはとにかくカッコイイ。好みによると思うが、髪は短髪、顔は男らしい感じでカッコイイらしい。クラスメイトからはよく『イカツイ!』と言われる。性格も野蛮でワガママで感情で動くのが、なぜか勢いと思いっ切りが良いと捉えられるらしい。優しいところもあると付け加えておこう。

 女にもモテるが、男にもモテるタイプだ。むしろ男の方がモテるかもしれない。

 だから女の一人や二人や三人ぐらいいてもおかしくはないが……。


 馬鹿なのか?

 頭の良い馬鹿なのか?

 父上様が高校のテストでトップレベルの点数出したと祖母ばばさまおっしゃってたのは嘘か??

 あの嘘つき祖母ばばぁ……。


 大体、あの場所で見つかる方がおかしい。

 人がゴミのような人混みだぞ。

 ざっと何万人とかってレベルだぞ?


「あっ……☆」 


 ギル? どうした?


「ナ、ナンデモナイ☆」


 またカタコトだし。

 なんか隠してる?


「カ、カクシテナイヨ☆」


 怪しい……。が、ギルは嘘を言わない。

 ……まぁいいか。


 父親ラスボスは大馬鹿だったと。

 それで月子ははさま大激怒と。


 これで原因も分かった。

 次の日の朝、皿が勢いよく飛び回っていた理由もハッキリした。

 夫婦喧嘩だ。

 そして、こっちに飛んで来たのは皿ではなく、ただのトバッチリだ。


 あとは対策だな……。

 なんだか無理ゲーな気がしてきたがここで諦める訳にはいかない。


 じっくり考えるか〜……。

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