第25話 アナザーワールド １１
誰にも聞かれないようにかなり小さな声で呼んだ。
祈るように目を瞑る。
「おまたせ！ やっと出てこられたよ☆」
ギル！
嬉しくてちょっと泣きそうになる。
もう会えないかと思ってた……。
「心配かけてごめんね！ ちょ〜っと心のダメージが大きかったみたいでなかなか出てこれなかったんだよ☆」
今回はなんの感情に支配されていたの？
自分でもあんまり分かってないんだ。
「う〜んとねぇ〜、なんていうかなぁ〜……。感情が混乱してた。が、正しいかな？☆」
なるほど。一つの感情じゃなくて、色々な感情がごちゃ混ぜでもダメってこと？
「そう。ちょっと絡まってるぐらいなら大丈夫なんだけど、今回は相当ショックだったみたい☆」
でもギルが出てきたんだからもう大丈夫だね。
「うん。もう大丈夫！☆」
さーて、ギルも戻ってきたし、頭も絶好調……。
今なら思い出せる気がする。
昨日出会っていたはずの人物。
僕が記憶から消した人。
いや、ちょっと待て……。
今日の朝、
皿が割れまくっていたのは何故だ！？
冷静になった僕に大きな疑問が再び
そもそも、原因は
僕の心にダメージを受けるほどショックだったこと。
それは……。
それは、
僕の知る限り、全てを楽しんでいる。
よく
僕には全く理解出来ないが、あれは
そんな
発狂しながら皿を何枚も投げていたのだ。
信じられない光景。
それこそ、朝の家の中は異世界だった。
初めて母が見せた狂気。
なるほどね。
これはショックだわ。
記憶無くすわ。
異世界へ現実逃避だわ。
まぁ無事逃避から戻ってこられたんだけど……。
取り敢えず自分の分析は完了した。
事柄、記憶の喪失。
原因、
対策、
対策……。
対策……。
まだダメだ。
ピースが足りない。
このままの状態で家に帰って
何が原因で
それが分かるまで家には帰りたくないな……。
実はもう問題解決していて、家に帰るといつも通りの
差し当たっては、昨日出合ったはずの
まぁ時間はたっぷりある。
給食までには思い出せるだろ……。
泣いたり、頭使ったり、昨日歩き回ったのもあり、ちょっと疲れてきた。
仮眠だな。
僕は取り敢えず居眠りして、体力と精神力の回復に専念する。
気付けば次の授業が始まっていた。
無意識で、起立、礼、着席をやっていたらしい。
僕、凄いな。
自分に感心してみたのは良いけど、はてさて……。
このままだと給食までには思い出せないかもしれない。
ちょっと寝たらどうでも良くなってきたのだ。
たまに発狂してもしょうがないかもしれない。
でも謎を謎のまま終わらすのもなぁ……。
大きく深呼吸しながら考える。
やっぱり気になる。
困った時は……、
ギルの出番だ！
ギル。ちょっとだけ助けて。
昨日遊園地で出会った人。
もうちょっとで思い出せそうなんだけど、モヤモヤがかかってダメなんだ。
なんかヒント。お願い。
「そうだねぇ〜。光と闇。表と裏。秩序と混沌。相反する二つの感情☆」
また難しいヒントだこと……。
でも、ギルのヒントには幾度となく助けられてきた。
それに……、謎解きゲームみたいで結構気に入っている。
光と闇……。
表と裏……。
秩序と混沌……。
そんなゲームの闇堕ちキャラみたいな人間、現実にいる？
「いるいる！ 闇堕ちキャラいるｗ☆」
なるほどねぇー。
なんか分かりかけてきたかも。
相反する二つの感情ねぇ……。
こんな時は頭で考えるよりも心で考える。
直感で出てくる人物は一人しかいない。
だけど……、この人が原因になるのか？
予想出来そうなことを色々考えてみる。
あの人の行動パターン。
性格とか、考え方とか……。
もし自分がされたら発狂してしまう様な事……。
うーん。
なんだか原因があり過ぎるような気がしてきた。
だけど、考えられるどれもが決定打に欠ける。
それに原因の内容がしっかり分からないと対策の立てようが無い……。
そもそも対策出来るのか？
不安になってきた。
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