第22話 アナザーワールド 8
ここは学校だ。
僕は何故か泣いていた。
先生と何か話をしているようだ。
なんで……?
最近こんなことは無かったのに。
頭がボンヤリして何も考えられない。
夢を観ているのか?
実はベッドの上で寝ているとか。
しかし、頬を伝う涙がやけに熱い。
現実だな……。
にしても、別の世界に自分がいるように感じる。
どうやって学校に来た?
いつもみたく詩織と雛の三人で登校したのか?
空気が重い。
宿題を忘れてきた時と同じ様な感じで灰色の世界だ。
思い出せ。
いや、今日は遅刻してきた。
何故遅刻した?
ギルは? 今僕は困っている。
ギル?
……出て来ない。
胸が痛い。
不安な気持ちに押し潰されそうだ。
もしかして、今までの事が全部夢で……、
今のこの瞬間が現実なのか?
ギルなんて最初から居なかった?
また涙が溢れてくる。
突然ギルが居なくなったと思うと悲しみが大きくなり涙を加速させる。
先生が何か言っているが全然頭に入ってこない。
このままじゃダメだ!?
取り敢えず落ち着け。
深呼吸だ。
大きく息を吸い込め!
そして息を止めてグッと我慢だ。
やれる。
僕ならやれるはずだ!
そして、思い出せ!
今日は遅刻した。
何故遅刻した?
朝の事……。
皿……。
皿が宙を舞っている……。
ダメだ。ここは異世界だ。
皿が宙を舞うはずがない。
頭が少しずつ回るようになってきた。
異世界なら大丈夫。
主人公は僕。
必ずピンチを切り抜けるのが主人公の仕事だ。
仕事を卒なくこなす。
それだけの事だ。
もう少し分析する事にしよう。
魔法は?
魔法が使える世界なのか?
皿が宙を舞えるなら魔法か何か特殊な力があるはずだ。
何でも良い、何か思い出せ!
今日の朝、確かに皿が浮いてたはずだ。
……いや、違う。
皿は舞っていない。
何枚もの皿が勢いよく飛びかい音を立てて割れている。
そして月子が何か叫んでいる。
僕は心配そうにしているがその場を逃げるように学校に来た。
一つ分かった事がある。魔法は使えない。
そして一つ分からない事が増えた。
月子は何を言っていた?
ふと思い出したことがある。
昨日の事。
確か昨日は四人で遊びに行った。
少しずつ昨日の記憶が鮮明になってくる……。
月子「おきろー! 朝よー!」
まだ少し眠い。
月子「早く起きないと遊ぶ時間が無くなっちゃうよ」
その言葉で覚醒する。
今日は遊園地に行く日だ。
いつもはのんびり屋だが、今日は違う。
テキパキと着替え出かける準備をする。
弟達はすでに着替え終わっていた。
何が悪いのか? 怒られるのは必ず僕なのだ。
一通り準備が整い家を後にする。
……がしかし、ペーパードライバーだった為、車の運転は全く出来ない。
なので電車とバスで遊園地まで行く。
いつもと違う移動手段、それだけでワクワクしていた。
周りの風景も違って見える。
行く先は分かっておらず、遊園地という情報だけ。
その為いつ到着するかも分からない。
普通は長時間の移動は子供には辛いに違いない。
だが、そんな事は一切無かった。
僕は長男らしくジッと座ってい……なかった。
五分毎に『まだかなぁ?』と問いかけたり、電車の中を探索したり……。
辛かったのは
自分で言うのもあれなんだが、一癖も二癖もある僕の子守りなんて
なんとか目的地まで辿り着き、更にテンションは上がった。
遊園地だ!
人、人、人!
人がゴミのようだ!
じゃなくて、
迷子にならないように気を付けなければ。
こういう場所の場合、三人も子供がいると一人ぐらい必ずと言っていいほど迷子になる。
一昨年の初詣に行った時も優理が迷子になり大変だった。
力斗がまだ小さい為、
優理のお守りは僕の仕事だ。
上がり過ぎたテンションを少し下げる。
そして優理の左手をグッと掴んだ。
光「迷子になると大変だから手繋いで行くよ」
優理「うん。楽しみ!」
出入口のゲートを後にして少しずつ探索していく。
どうやら遊園地ではなく、遊園地みたいな所のようだ。奥の方に観覧車等の乗り物が何個か見えるが、食べ物屋さんや他にも色々な建物が広がっている為、子供だけでなく大人も楽しめる仕様になっている。一日で全部制覇するのが困難な広さだ。
なんでもここが賑わうのは期間限定らしい。ニ、三ヶ月で違う施設になってしまうからこれだけの人が集まっているのだ。
いつの世も人間という生き物は期間限定の
さて、思っていた遊園地とは違ったのが良かったのか悪かったのか……。
良い意味で自分のテンションが落ち着いている。
あまりテンションが高くなると弟達の事なんて気にしていられなくなるからね。
その場合、真っ先に迷子になるのは僕だろう。
なぜか変な自信すらある。
でも、今は大丈夫。
しっかりと優理の手を握り一歩一歩進んでいく。
いざ、遊園地(?)へ!
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