第19話 アナザーワールド 5
いつもの三人で宿題を始める。
今日は変に気を使っているせいか、宿題がはかどらない。
ギル? どうかな?
「宿題に必死。かな?☆」
ですよね〜。
まずは宿題に専念するか。
「うん。雛の心が動いたら教えるね☆」
グラッツェ!
「また言ってるしw☆」
さて、まずは国語かぁ。
んー。取り敢えずカンニングだな。
漢字は嫌いだ。
ちゃちゃっと書き写して終わらせよう。
「カンニングで覚えられるの?☆」
いや無理だね。最初から覚えるつもりは無い。
ギルが今更そんな事言うのも珍しいね。
「って雛が思ってるみたい☆」
おぅっと!? そうきたか。
そこはスルーで……、
じゃないと宿題が終わらない。
「オッケー☆」
せっせと漢字を書き写す。
みんなこれを覚えながらやってるのか?
本当に感心する。
僕はパスだ。
とにかく書き写して写して写す……。
ダメだ。すでに嫌になってきた……。
頑張れ自分!
「大丈夫? って思われてるよw☆」
大丈夫!
ギルに言っても意味ないか……。
「ちなみに詩織は集中してる☆」
そう。詩織が凄いのは算数も国語も出来るのだ。
普通は理数系だと国語とか社会は苦手なんだと思っていたが、そうでも無いらしい。
詩織「終わったよー! 二番目!」
二番目は詩織だ。一番は……雛?
いつの間に!?
書き写している僕が三番目だ。
そしてまだもう少しかかりそうだ。
「二人共こっち見てニコニコしてるよ☆」
言われなくても分かる。
二人の視線は僕に釘付けだ。
もうちょい待ってて……。
僕は待たされるのが嫌いだ。
だが、待たせるのは得意だ。
二人共我慢強いのか、今まで一度も文句を言ってきたことがない。
「ワガママなんだよねぇー。ほんとに☆」
それは二人じゃなくて、ギルの言葉だね。
良し!
光「終わったー!」
詩織「じゃあ次は理科ね」
光「タイム! ちょっと休憩」
詩織「じゃあ五分後からにする?」
光「やった!」
国語、というよりも漢字を書くだけなのにどっと疲れた。ちょい休憩だ。さて雛の様子はどうだろうか? っとギル、どんな感じ?
「三人仲良しで良かったな。だって☆」
なるほど。なんかもっとこうゲームの事とか、漫画の事とか考えたりしてない?
「多分ゲームの事考えてるの君だけだよ☆」
えー。じゃあ何の話すればいいの?
完全にミスった。雛の事を考えているつもりで、自分の当たり前がベースになっている。
雛って何が好きなんだろ!?
じっと雛の様子を伺う。
わからん!
そもそも男の子の遊びや趣味が、女の子に通用しないのが致命的だ。いや、そもそも男の子でも僕と趣味が合う友達は少ない。やっぱダメじゃん!
詩織「きゅ〜け〜おわり〜! じゃあ理科をやりま〜す!」
そうこうしてる内に理科の宿題が始まってしまった。理科は面白い内容の授業が好きだ。宿題は嫌いだが……。特に教科書に書いてあった磁石とか電気とかは最高だ。早く三学期になって欲しい。
だけど今の宿題は昆虫とか植物だ。アウトドア向けの問題はあまり好きじゃない。
なになに? 【植物について次の文で正しいものには◯を、まちがっているものには✕をかこう】だって?
【1、根しかないものや葉しかないものがある】
◯だな。僕は知っている。運動場の草抜きで根こそぎ抜けるやつもいれば、茎の部分で千切れて根っこが残ってしまうやつもいる。やつらは根しかない植物だ。そして道を歩いていると葉っぱだけの状態で落ちている落ち葉とやらの存在もいる。やつらは葉っぱしかない植物だ。
【2、葉は根からでてくる】
難問だ。基本的に茎に葉っぱがついているから✕が正解だと思う……。思うのだが、根っこに葉っぱがついている植物が絶対にいないとは限らない。もしかしたら、そんな変なやつがいても良いのではないか? やっぱ◯だな。
【3、植物のしゅるいによって、色、形、大きさがちがう】
考えるまでもない。◯だ。これは説明不要だろ?
理科の問題は簡単過ぎてあっという間に終わってしまった。
もちろん先の問題の1と2は✕が正解だ。
それを知っていて◯を書いた。
「やっぱり
ほっといて欲しいw
これは僕の信念だ。世の中に絶対は無い。
かの有名な科学者アインシュタインも言っている。
「そんな事言ってたっけ?☆」
知らない。けど、多分言ってる……。
と、思う……。
この調子で理科のテストを受けるものだから、中々百点満点が取れない。
でも、良いのだ。これで良いのだ。
詩織「やったー! 終わったー! 一番!」
しまった! ギルと戯れていたら宣言するの忘れてた!
詩織「初めて光君に理科で勝てた!」
詩織はこれでもかというほど嬉しそうで飛び跳ねそうだ。
まぁ、たまには理科の一番を譲ろう。
その後、算数、社会と続けて宿題を終わらせていった。
好きな教科の問題で楽しんだせいもあって、すでに雛羽ばたき大作戦は僕の頭の中から羽ばたいており忘れさられていた。
「結局羽ばたいたのは詩織だったねw☆」
ギルの言葉で思い出した時はすでに玄関前だった。
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