第14話 失敗の価値 11

 足だけはダメだろ?

 逆に完全体になるまで視えなくても……。

 いや、むしろ視えないほうが良いぐらいまである。

 想像してみて欲しい。僕の立っている隣に足だけがあるのを……。どう見てもお化けにしか見えない。他の人達には視えないから、僕が気にしなければ良いのだろうが……。


「ダメだった?☆」


 ダメだろ。


「でも、成長した訳だしOKOKだよね?☆」


 お化けギル。


「お化けじゃないよぉ〜☆」


 もうちょっとなんとかならなかったの?


「うーん。出来ない事もないけど、君の反応が面白いからこのままで良いよね?☆」


 はいはい。

 しばらくはお化けギルで決定ね。

 でも、他の人の心の中が分かるようになったのはかなりすごいね!

 そっちは褒めてあげる。


「でしょ!☆」


 まぁ、今はゲームにハマっていて電子機器相手には全く意味が無いが……。

 それでもお化けギルがすごいのには変わりない。正直成長するまで数年ぐらいはかかると思っていたから、この成長ペースなら今後が楽しみだ。


 ふと色々な失敗があった事を思い出す。

 宿題の事。

 ラスボスの攻撃。

 先生への発言。

 雛を泣かせた事。

 他にもちょっとした失敗があったりした。

 着替え忘れてパジャマで登校しようとした時は、出迎えの詩織と雛が大笑いしていたなぁ……。

 二人の顔を思い出し自然と笑みが溢れる。

 

 人生の終りを覚悟するような思いもしたが、過ぎてみればいい思い出な気もする。これがリアルの経験値なのだろうか? 失敗したことにも意味がある。その結果が今であり、ギルの成長にも繋がっている。無意味な事なんて一つもなく、その事柄の価値に気付けるかどうか? それがもっとも大事な事なんだ。それにゲームみたいに経験値がギルによって可視化出来るのは分かりやすくて助かる。もっと失敗しないと……。

 

 「そういえば……、そろそろ寝たほうがいいと思うよ☆」


 体の心配をしてくれているのだろうか? ギルがそんな事を言うのは珍しい。ここ最近夜はずっと遊んでいたのだが、そんな事を言われるのは初めてだ。心配してくれるのは嬉しいが、この時間を今は満喫したい。

 もう少しゲームしてから寝るよ。


「でもラスボスが帰ってくるよ?☆」


 何!? それは大変!! ふと時計に目を向ける。二十三時十分。父親あいつが帰ってくるには早いはず。

 まだ時間あるから大丈夫だよ?


「そう?? 近くにラスボスの心を感じるんだけどな☆」


 本当!?

 ギルの言葉を信じゲームのデータを保存して、ベッドに潜り込む。

 しばらくすると家の玄関が開く音がした。


「ほらね☆」


 ギル! サンキュー! すぐに寝るよ。また明日ね!


「ラミパス ラミパス ルルルルルー」


 ギルに異国の挨拶でさよならを告げる。



 しばらくの間沈黙が続いた。

 居なくなったようだ。

 ようやく頭の中で引っかかっていた事が解決した。

 ギルの嘘つきw

 そんな事を思いながら深い眠りについた。



 次の日ギルを呼び出して、昨日の話の確認をした。

 いつでもギルを呼べる事が分かり喜んだのもつかの間、ギルに問い詰める。


 ギルの嘘つき。


「ナ、ナンノコトカナ?☆」


 カタコトだ。誤魔化すつもりらしい。

 昨日の夜、ちゃんと居なくなったよね?

 いつもの呪文じゃなかったのに。


「ソ、ソウダネー☆」


 これでハッキリした。ギルにお帰り頂く為の条件。僕が心でギルにさよならと思いながら、声に出して挨拶をするだけで良かったのだ。極端な話、心で思いながら『じゃあね』と声を出すだけでも良かったのだ。


「バレちゃったね☆」


 正解らしい。


「だって、それっぽい方が面白いでしょ?☆」


 まぁ、昨日の事があるから許してあげよう。楽しめたかというと、あの呪文がお嫁さん事件の原因でもある為素直には言えないが……。そのお嫁さん達のおかげで学校がらくになったのは間違い無い。


 あとは、他の人の心が分かるのかどうか?

 これを確認するのが一番大変そうだな。

 そもそもどうやって確認しようか?


「じゃあねぇ……。あの子! あの子は君が好きだよ!☆」


 えっ!? 誰?? 僕の事が好きな子!? ちょっとドキっとした。

 ギルの足を確認して、つま先の向くほうへ目線を向ける。

 そこには、フリフリのワンピースを着た女の子がいた。


 ギル〜……。それは僕も知ってる……。



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