第13話 失敗の価値 10

「久しぶりだね!☆」


 ビックリした……。

 何にビックリしたかって?

 そんなの決まっている。

 ギルが出てきたことにビックリしたのだ。


 本来僕が困っている時に現れるはずのギルが、【困っていない時】に出てきたのだ。ビックリもするだろう? 


「あはは! ドッキリ大成功だね☆」


 ドッキリって……、そんな事出来たの?


「うん! 出来るようになったみたい☆」


 ん? なったってどういうこと?? レベルアップした??


「そう! レベルアップしたw☆」


 どうやらギルがレベルアップしたらしい。一先ず突然出てきたことに違和感を覚えたが納得しておく。ビックリさせられたことには少しだけイラッとしたが、それよりも嬉しさが勝っていた。

 本当に久しぶりだ。全然出て来なかったけど、なにしてたの??


「それはもちろん……、経験値貯め☆」


 スライムでも倒しまくってたんだろうか?


「うーそw 本当はずっと君のこと眺めていただけ。君が成長したから、こうやって好きな時に出てこられるようになったの☆」


 そっか、心の成長ってやつでギルも成長したって事か。でも自分では全然成長したって気がしないんだけど……。


「大丈夫! しっかり成長してるよ☆」


 そうなのか? まだ頭には疑問符が浮かんでいるが、ギルが言ってるから成長してる事にしておこう。

 所で好きな時に出てこられるってどういうこと?僕が呼んだらすぐ出てこられるってこと?


「そう!! 君が呼んでくれたらいつでも出てこられるよ☆」


「出てくる為の呪文はねぇ……、『混沌こんとんより顕現けんげんせよ 血と魂とことわりの代行者 盟約めいやくちぎりをその身に宿せ 助言者ギル!』って唱えると良いよw☆」


 はいはい。

 嘘でしょ? それ。

 さっき勝手に出てきたじゃん。

 

「やっぱりバレた?☆」


 流石にね。呼ぶ時は、『ギル』って呼ぶから。それで良い?


 「うん。いいよ☆」 


 頭の中で何かが引っかかる。とても大事な事。なんだろう? すごく重要な事な気がするのだが……、思い出せない。


「それとねー。まだ伝えなきゃいけない事があるんだ☆」


 まだ何かあるの?


「そう! 実はちょっとだけなんだけど、他の人の心の中もぼんやり視えるようになったの☆」


 おっ! 本当!? ギルすげぇー!!

 これであいつ(父親)に勝つ為の第一歩が踏み出せた。ラスボス戦に向けて、少しずつだがレベルアップしている感があり素直に喜べた。

 いつかぶっ倒してやる!

 あいつに吹っ飛ばされて恐怖を覚えたあの日以来、僕は打倒ラスボスを心に誓ったのだ。


「ラスボス戦はまだちょっと早いかな☆」


 大丈夫。まだ早い事はちゃんと理解している。少しずつで良い。今はまだ無理だけど、いつか超えてやる。再度ラスボスに対する意識を心に刻む。


「あともう一つ! 気付かないかな? こっち視てみて☆」


 ん?? 『こっち視てみて』って言われてもギル見えないじゃん??


「よぉ〜〜く、み〜て☆」


 もしかして……、視えるようになったの??


「うん。だーかーら、じっと目を凝らして観てみて☆」


 じっーと目を凝らす。

 が、しかし視えない。

 ぼんやりし過ぎて、まだほとんど視えないんじゃないのか?

 目の前に居るはずのギルが視えるように、目を細めたり、見開いたり試してみたが全く視える気配がない。


「そっちじゃないよ! もっと下の方☆」


 ふと視線を下に向ける。


 !!!?


 いた。


 確かに視えるようになっている。


 視えるのだが……。


 ギル? これどういう事??


「だ〜か〜ら、ちょっとずつ視えるようになるって言ってたでしょ?☆」


 違う。そういう意味じゃない。

 もっとぼんやり視えるようになるとかさぁ……、最初は半分透き通っているとかさぁ……、そんなイメージがガラガラと音を立てて崩れゆく。


 僕の目線の先には二つの足があった。

 足の裏からくるぶしぐらいまでの足だ。

 くるぶし付近は輪切りになっており、その切り口はぼやけた黒色になっている。


 足じゃん!!!?


「そっ、あ〜しっ! 視えるようになったの☆」


 

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