第11話 失敗の価値 8

「君ってたまに強運発揮するよね☆」


 今、自分の部屋でギルと反省会を開いているところだ。


 僕は強運なのか? まぁ、あの後詩織と雛の三人で仲良く会話をしていたから強運なのかもしれない。

 下校中のその後の会話はこんな感じだったのだ。


詩織「ドッジボールってどういうこと??」


光「だってドッジボール強いのカッコいいじゃん! だから詩織が一番好きだよ。なんか変だった?」


雛「ドッジボールならしょうがない……かな。」


詩織「うーーん。ピナはそれで良いの?」


雛「だって私はお姫様だからドッジボール弱くてもいいんだもん」


詩織「でも私が一番だから、光君のお嫁さん役は私だからね!」


雛「うん。リンゴがカッコいいお嫁さんね」


詩織「なんか私が納得出来ないけど……まあ、そういう事で私がお嫁さんだからね! いい? 光君!」


光「なんで!? お嫁さんはまだちょっと早いっていうかなんていうか……なんでそうなった!?」


 先のやりとりでどうやら僕にはお嫁さんが出来たらしい。半ば強引に……。


「でも、詩織と雛は光の為に頑張ってたんだしお嫁さん達大事にしないとね☆」


 ギル〜。絶対からかってるだろ?

 お嫁さん【達】って……

 元はと言えば半分ギルのせいだからな!?


 僕の家まであと十数メートルの場所、別れ際の最後に雛がこう言い放ったのである。


「リンゴがカッコいいお嫁さんだから、私は可愛いお嫁さんになるね♡」


 その為僕は同時に二人もお嫁さんが出来たのだった。詩織は『ずるい!』と最後まで喚いていたがしばらくすればほとぼりも冷めるだろう。


 ところでお嫁さん事件の発端だが、原因は僕の行動にあった。

 三年生になってから宿題を忘れたせいで体調が悪くなり学校を早退する事が多かったこと。

 そのせいで三人揃っての下校が出来なかったこと。

 僕が寝てるような感じで意識がフワフワしている時があり、そんな時は必ず隠れて呪文みたいなものを一人でブツブツ言っていたこと。

(これは完全にギルのせいだろ?)

 それがこの一ヶ月で数回あったこと。

 細かい事を挙げていくとキリがなくなるが、詩織からしたら特にこの一ヶ月心配の連続だったとの事だ。


 絶対に変だと詩織が言い張り、雛と二人で話合い

をしたらしい。


詩織「絶対おかしいよ!最近の光君。」


雛「そうかな?いつも通り可愛いよ?」


詩織「だって誰もいないのに一人でブツブツ言ってるんだよ!?」


雛「リンゴの気のせいじゃない?」


詩織「気のせいじゃないもん! 一緒に遊んでた時にもなんか落ち込んでるのかな? って思って声かけてもフワフワして聞こえてない事とかあって……、今までそんなことなかったし!」


雛「そっかあ。確かにそんな事もあったかも。そう言われるとなんか最近の光君って心配だね。」


詩織「でしょ! ねぇ! ピナと私のどっちかが光のお嫁さんになるってのはどうかな? それで光君を助けてあげるの!」


雛「えぇ〜!? 良いけど……どっちがお嫁さんになるの?」


詩織「それは……やっぱ私かな♡」


雛「ずるい! ダメー! 私がなる!」


詩織「じゃあ光君に決めてもらうのは? それならいいでしょ? どっちになっても文句無しね?」


雛「良いよ。そうしよ!」


 こんな感じで話し合った結果がお嫁さんだった訳だ。なんておませさんなんでしょう。


 恋愛とは若き者の糧であり、若さとは無限の可能性を秘めているものなのだ。お嫁さんになる事も、はたまた魔法の声で光の頭を麻痺させる事も、なんでも出来てしまう。

 ちなみに光は若過ぎるようで、恋愛を糧にするにはまだまだ時間がかかりそうだったが。


 ギルとの反省会も程々にしてそろそろお帰り頂こうと思った矢先、ギルに伝えなければいけない事を思い出した。あのタイミングでのギルの一言がなければ今日のこの結果はあり得なかったかもしれないのだ。


 ギル! ありがと!


「どういたしまして☆」

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