第9話 失敗の価値 6
二時間目はテストでは無く社会の通常授業で、授業中ほとんどの時間をサボっていた。
教科書に落書きをしたり、居眠りしてみたり。
僕の社会の教科書は特別製だった。人々の暮らしの説明で町の人達の働いている写真などが掲載されているのだが、落書きで見る影も無くなっているのだ。全ての働く人達は豪快に鼻毛が出ている状態になっており、中には鼻毛なのか髭なのか分からない者や、アフロヘアーを書いてる途中で面倒臭くなってライオンみたいになっている者もいた。
もはや教科書内は鼻毛星人に侵略されておりこの教科書を使用しての授業は困難が伺えた。だが、僕にとって社会は興味の無いことだった為なんら問題はない。
そんな中でも今回の授業で一つ収獲があった。
ギルの事だ。
ギルは助言者として僕の知りたい事を何でも答えてくれる。そう思っていたのだが、実際には知らない事が多々ありギルの質問攻めに合っていた。
「この鼻毛のおじさんは何やってるの?☆」
とか、
「こっちのライオンはなんでうんこしてるの?☆」
等々……その都度僕は教科書を読み直してギルに答えていた。だから実際には半分ほどはサボっていたが、半分は勉強しているようなものだった。
その事に関して不思議と嫌な事とは思わなかった。むしろ楽しんでいた。
ちなみにライオンがうんこしているのは落書きであって、実際には無理やりライオンにさせられた工事現場のおじさんの写真だったのだが……。
ギルには、
『アフロよりライオンのが格好良いし、なんとなくうんこ描いてみたかったから。』
と答えておいた。
子供の落書きには特に深い意味など持たない事が良く伝わった事だろう。
ギルに何でも知ってる訳では無いのか?
と問いかけた際には全能では無い事を説明していた。
「うん。神様じゃないから知らない事なんていっぱいあるよ☆」
その事がとても新鮮で自然と親近感が持てたのだった。
「そもそも神様なんているのかどうかも怪しいし☆」
と、ギルが付け加えていたのには笑いをこらえるのに必死だった。
ギルみたいなのがいるなら神様の一人や二人いても不思議じゃないし、どっちらかというとギルが神様でも良いとも思っていた。
ちなみにギル=詩織説はしっかりギルに否定され安心していいとのことだった。
その後の三時間目と四時間目の授業は無事何事もなく終わっていき、給食も食べ終わり昼の自由時間のこと。
「お腹いっぱい。死にそう、、、」
クラスメイトの
修は一年生の時からずっと同じクラスで進級していて一番仲の良い友達だった。真面目でキッチリとした性格で勉強も出来るが、何故か不真面目な僕と話が合い意気投合していた。
修は顔もまぁまぁイケメンでクラスの女子からは人気が高く常にランキング上位だ。そんな修に対してたまに羨ましいと思う事があった。女子人気ランキングの事ではない。なんでも卒なくこなす所が憧れであり、目標でもあった。
分かりやすく説明すると、、
修みたいになれたらもっと女の子にモテるのに。
やっぱりモテたいらしい。
一方、修自身は僕の大雑把で不真面目そうな所に惹かれているらしくお互い無いものねだりだったのだ。惹かれ合うとはそういうことなのだろう。
この時の光は知らなかったが、光も実はランキング上位の実力を持っていたのだ。クラスの中には光の事を気にしている女子が何人かいた。しかし光の両隣は常に詩織と雛の指定席みたいになっており、なかなか他の女子は光と絡むことが出来なかったのだ。
それを光が知るのはまだまだ先の事だが。
僕と修の二人は休み時間中会話に花を咲かせていた。
光「修はいつも食べ過ぎなんだってw」
修「分かってるけどさぁ、、、食べちゃうんだよねぇw」
光「そういえば修は算数のテストどうだった?」
修「余裕!今回のは予習もしてたしバッチリだぜ!」
光「やっぱ修はすげーなー。予習なんかしたこと無いしw」
修「でも、光も算数は余裕だろ? なんか突然叫んでたから笑いそうでやばかったし。あんなのテストテロだよw」
光「叫んでないしw ワザとじゃないしw でも新しい対修専用破壊兵器って事にしといて。」
修「僕1人狙うならいいけど、クラスの半分は攻撃のせいで頭真っ白だってw」
そんな他愛も無い会話で盛り上がっていたのだが、それと共に刻一刻と審判の刻は迫ってきていた。
放課後まで後数時間……。
審判を下だす当の本人はすっかり朝の事を忘れていた。
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