第3話 お願いする時はちゃんと声にだして

 ギルは見事復活を遂げた様だが……。

 もしかして僕の人生これからずっとこの変な声と共に歩んでいかなくてはいけないのか?


「変な声じゃないし! それに君を助けてあげようってのに、お帰り頂くとか!? ちゃんと話は最後まで聞いてよね!☆」


 ごめん、ごめん。なんか気味悪くてついw

 それにしても、ギルとこれだけ意思の疎通が出来るから本当に現実の出来事なんだろうな。

 やっぱ頭が……。


「ストーップ! 君の頭は大丈夫! と、く、べ、つ! なだけ☆」


 なんだか必死さが伝わってくる。


「必死にもなるよ! もぉー! 君にも分かるように説明するからちゃんと最後まで聞いてよ!☆」


 そう言ってギルは僕に説明を始めた。

 最初は少し冗談っぽく、僕が警戒けいかいしないように気を使っているようだったが、途中からシリアスな感じになったのでちゃんと最後まで話を聞いた。


「〜と言うわけで、そろそろお邪魔するね。明日からも宜しく。じゃあ説明した通りに、ね☆」


 はぁ〜。

 やるのか〜!? あれを……、でもやらないとゆっくり寝れそうにないからなぁ……。


 決心した僕は姿の見えないギルに向かってこう言った。


「ギルさん ギルさん どうぞお帰りください」


 僕は呪文の様な言葉を発した。

 しばらくの間沈黙が続く。



 成功だ。


 今唱えた呪文はギルに帰って貰う為の儀式だ。どう考えてもコ○クリさんだろ!? ギルの存在は怪しすぎるけど、無事居なくなったのならとりあえずOKだ。


 ギルの説明によるとこういうことらしい。


 僕の心がニ日も連続して死んだせいでギルとの繋がりみたいなのがかなり強くなったらしい。だから最初は心で思っただけで簡単に居なくなってしまったけど、繋がりが強くなってからは居なくなるのに儀式的なものが必要になったと。その儀式ってのが声に出して呪文を唱える。


 勘弁かんべんして欲しい。

 あんな恥ずかしい呪文、誰かに聞かれたらそれこそ僕の頭が変になったと勘違いされてしまう。


 まぁ、儀式は成功したっぽいので、ギルの説明は本当の事だと思いたいが、全てを信じるのはしばらく様子を見てからかな? 中々に面白い内容だったからちょっと楽しみでもある。


 一番大事なのはギルと心の話。

 僕の心が成長する事でギルも成長するとの事だ。今はギルの姿が視えないけれど、成長すると僕にだけ姿も視える様になる。そしてギルの力も強くなる。ギルは僕の心の中が分かるように、他の人の心の中も分かるようになるんだって。もしそれが本当に可能なら……。

 あいつに勝てるかもしれない!?

 この家のラスボスに……。


 他にも色々説明されたけど、まずは検証から。しばらくは心とやらを成長させる事からだな。


 心の成長に必要なものは刺激。特に大きな出来事があると劇的に成長するとの事だ。昨日のあれは確かに大きな出来事だったが、あんな事はもう勘弁なので、とりあえず感動するとかそういうので試していくか。

 気付いたらお腹が痛いのはいつの間にか治まっていた。普段の僕の部屋。僕だけの領域りょういき

 ギルが助けてくれたのかな?

 僕は少しだけギルに感謝した。


 調子も戻ったので僕はひたすら漫画を読むことにした。漫画を読めば十分な刺激は感じられると思ったからだ。




 それから数日後……。


 だぁー!! ダメだ!

 分からん!

 成長……。

 心の成長ってなんだよ!?

 僕はひたすら漫画を読んだ。

 読んだのだが……。

 心の成長ってのは理解が出来ん!

 そもそも心は大人になれば勝手に成長するもんだろ?

 トマトもピーマンも食べられるようになるんだろ?

 何でも出来るようになるんだろ?



 なんか疲れた……。


「もしもーし。困ってる?☆」


 ギルだ。

 そういえば、帰る時は儀式が必要だが困った時には勝手に現れるって言ってたわ……。


 はいはい。困ってないです。


「ギルさん ギルさん どうぞお帰りください」


「ちょっ!……」


 ギルは居なくなった。

 経験値1ゲット。


 成長したらこんな感じで姿も出てくるのか?


 やっぱり成長させるのやめようかな……。

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