第2話 生き返り?

 僕はどうやら死んでしまったらしい。

 この体は恐らく霊体か何かで、僕の肉体は棺桶かんおけの中に……


 でもギルは『死んでる』って言ってた。一回目があるならがあるはず。ニ回目以降の死があるならならば、生き返りイベントもあるはずなのだ。

 この後何かの試練を乗り越えたら無事生き返るとか、そんな感じの設定か? こう見えて僕は漫画、特にファンタジー系は詳しい。生き返るぐらいの事で驚いたりはしない。


 さぁ、僕の受ける試練はなんだ?

 勇者か?

 勇者になって魔王を倒せばいいのか?

 もちろん最強の状態で異世界転生するんだよな?


「はぁ〜〜……☆」


 ギルの深い溜め息が響き渡る。そしてこう続く。


「君はバカなのか? 人が死んで生き返る訳無いだろ?☆」


 むっ!?

 なんか頭にきたぞ。ギルが言ったんだろ? 昨日一回死んでるって! それを受け入れて尚且なおかつ冷静に対応出来る小学生なんて僕ぐらいだぞ! 褒められても良いくらいなのに、それをバカとは、やっぱり喧嘩売ってるだろ!


「ごめん、ごめん。言い過ぎたw まぁ、君が特別なのは頭だけで体とかは普通だし、一回死んだら間違いなく生き返るのは無理だと思うよ☆」


 僕は勇者にはなれないのか? 残念だ……。


「あと、一回死んだっていうのは心の事ね。君の心が壊れそうになったから、助言者が現れたって言う設定だよ☆」


 僕はまだ生きてる? 良かった! まだまだやりたい放題する予定だったからホッと溜め息が出た。ところで、僕が死んで無いのは良いのだが、設定で変な声が聞こえて来るのはちょっと……、それに心は壊れそうでも何でも無いからそろそろお帰り頂いても? 学校の件はちょっと気持ち悪いけど、僕は元々忘れっぽいから気にしなければ全然平気だし、この後ゲームする予定なんだから邪魔なんだよね。


「待って! ダメなんだ! 君がそんな事言うと話が出来なく…」


 声が段々小さくなって最後まで聞き取れなかった。どうやらギルは居なくなったらしい。これで安心して遊べる。まぁ、学校の事とか思い出せないのは気にしないでおこう。

 実は僕は昔から記憶が無くなる事が良くあったのだ。と言っても、記憶喪失とか記憶障害とかでは無い。僕にとって楽しくない事とか、どーでも良い事に関しては全く興味が持てず忘れてしまうのだ。

それこそ心に刻まれない出来事は記憶にも残らない。みたいな? 逆に楽しい事は心に刻まれているのだろう。

 三年前のお正月に飲んだオレンジジュースや、二年生の時に女の子からプレゼントを貰った時の事とかはいつでも思い出せる。しかし、残念な事にとても嫌な出来事も思い出せるのだ。思い出すと言うより思い出してが正解かな? きっと心に刻まれているから忘れる事が出来無い。それどころか勝手に記憶が……嫌な思い出が1人歩きして脳裏に浮かんでしまう。


 そんな事を考えていたら昨日の事を思い出してしまった。絶対的な恐怖。死ぬかもしれ無いと思った事。

 いっ……!?

 胸が痛い。

 突然学校の教室で感じる息苦しさが襲ってきた。

 なんで? ここは家なのに!?

 僕の部屋なのに。


 嫌だ!

 ここがダメなら何処に行けばいいの?

 僕の居場所が無くなってしまう!?


 自然と涙があふれそうになる。

 なんで?

 なんで?

 なんで!!?


「はい!2回目ー!☆」


 ギル? また出てきた。


「今心死んだね。確実に死んだね。そして助言者ふっかーつ!!☆」


 どうやら生き返るのは僕じゃなく、ギルの方だったみたいだ。



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